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Valeo が車内用 XR レーシングゲームを SXSW で発表

VALEO Anonymous
Apr 19, 2024|5 分
Valeo が車内用 XR レーシングゲームを SXSW で発表

「ねぇ、まだ着かないの?」長時間のドライブでこのフレーズから解放されること、あるいは日々家族を車で送り迎えする際に平穏と静けさを望まない親はいないでしょう。これが、今年テキサスのオースティンで開催されたサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)で初めて発表された『Valeo Racer』を開発中に、Valeo のソフトウェアエンジニアチームが直面した課題でした。

Valeo Racer』は、現実世界の走行環境と仮想の 3D 要素の融合により、ユニークで没入感のある体験を生み出す車内用エクステンデッドリアリティ(XR)ゲームです。プレイヤーは、乗車した車内の Wi-Fi に接続されたスマホやタブレットを使用して対戦します。レーシングカーを操作して障害物を避けながらコインを集めることで、できる限り多くのポイントの獲得を目指します。

Valeo Racer』は、ライブ動画、車両環境認識、デジタルゲーム要素を組み合わせた、最初の XR ビデオゲームです。この無限のランナーゲームは、Valeo が開発した新しいソフトウェアスタックによって生成されます。このソフトウェアスタックは、カメラ、レーダー、超音波センサーといった、車両の既存の先進運転支援システム(ADAS)、および人工知能の知覚アルゴリズムを使用し、Unity ランタイムを介して車両のリアルタイム環境データを処理することで、ゲーム要素を生成します。

Unity ランタイムは Unity エンジンの独自コンポーネントで、高性能グラフィックスのレンダリング、ユーザー入力とインタラクションの管理、ゲームコンポーネントの調整、リアルタイムの物理シミュレーションのサポート、アニメーション、スクリプト言語、アセット管理、ネットワーキングなど、ゲームのさまざまな重要コンポーネントをエンドデバイス上で処理します。ランタイムの使用により、Valeo は、車内の Wi-Fi に接続されたスマートフォンやタブレット上で、車のセンサーからリアルタイムで取得したデータを使って混合現実(MR)ゲームをプレイしたり、移動中に対戦したりするオプションを同乗者のプレイヤーに提供することができました。

国際的な自動車部品メーカーが『Valeo Racer』を開発したのは、単にゲームの面白さだけが理由ではありません。電気自動車や高度な自律走行機能、ドライバーや同乗者の体験の改革など、自動車を取り巻く環境は急速に進化しています。車内エンターテイメントもまた、ユーザー体験を向上させる重要な要素のひとつとなりました。

Valeo Racer

Valeo の CTO である Geoffrey Bouquot 氏と Unity Industry のマネージングプロデューサーである Nick Facey は、XR Association の社長兼 CEO である Elizabeth Hyman 氏と共に、SXSW にて『Cruising with Augmented Reality: Exploring Entertainment in Autonomous Cars』と題したファイアーサイドチャットを行いました。

Bouquot 氏は、車両用センサーとソフトウェアを、本来の機能を超えて応用することにおいて、無限の可能性があると主張しました。

Bouquot 氏:「2030 年までには、ほぼすべての自動車にカメラやその他のセンサーが搭載されるでしょう。これらの技術は関連するソフトウェアとともに、次世代のモビリティにおける安全性、電動化、持続可能性をサポートします。それ以上に、ゲームや教育など、他の用途に対する世界的な機会を提供します。自動車、ゲーム、その他のクリエイティブ産業のパートナーとともに、こうした新しいフロンティアを開拓することには胸が躍ります。」

これに、Facey は次のように加えました。「これまでは、車の信号をより優れたグラフィックスエンジンに取り込むなど、Unity も含め多くがドライバーに焦点を当てたものでした。私たちは現在、より安全かつ優良で、効率的な運転を実現するために、非常に優れたグラフィックスとリアルタイムの情報をドライバーに提供しています。そして今、同乗者にもその体験を味わってもらおうとしています。このような技術の融合は、ほぼ必ずと言っていいほど、消費者にとって良いことです。」

Valeo は自動車用センサーおよびカメラの分野で世界を牽引する企業であり、20 年以上にわたり拡張現実(AR)にも携わってきました。車のバックアップカメラの映像やヘッドアップディスプレイに重なって映し出される駐車誘導表示は、 Valeo が開発した AR 機能で、すでに何百万台もの自動車に搭載されています。同社の新しい XR ソフトウェア開発キットは、車載カメラ、センサー、知覚アルゴリズム、人工知能を活用し、 車内ゲーム体験を再構築する新しいタイプのゲームを開発する手段をゲーム開発者に提供します。

Hyman 氏:「仮想現実、拡張現実、混合現実の業界団体である XR Association のリーダーとして、私は常に没入型技術の最新の進歩と使用例を特定し、紹介する機会を探しています。『Valeo Racer』はゲーム体験であると同時に、自律走行車の進歩と没入型テクノロジーを融合させる方法で新たな製品や体験を創造することを開発者にインスパイアするプラットフォームでもあります。」

Valeo Racer』は、自動車技術会社がゲーム分野に参入するという兆候ではありません。むしろ、Valeo の XR ソフトウェア開発キットが自動車産業にもたらす可能性を示すものであり、新しいタイプの車内エンターテイメントの概念を実証するものです。自動車がより高度な自律性レベルに達するにつれて、XR は同乗者とドライバーの双方に新たな体験を生み出す機会をさらに提供することになるでしょう。

こちらから、XR プロジェクトで Unity がどのようにお役に立てるかをご覧ください。 SXSW 2024 で XR ゲーム『Valeo Racer』を体験するチャンスを逃してしまいましたか?こちらの紹介動画をご覧ください。