Unity 初のレベルデザイナー向け e ブックの提供を開始

レベルデザイナーはゲーム開発におけるストーリーテラー兼マスタービルダーで、ゲームデザイナーと共にゲームの筋書きや原型を提供します。彼らは多くの役割を持ち、紙や物理的な素材での構成要素作りから画面上でのプロトタイピングまで、複数のメディアを使いこなします。
今回、当社初となるレベルデザイナー向け e ブックの提供が開始されたことをお知らせします。ゲームステージデザイン入門には、仕事やキャリアのヒント、そしてワールド構築に最も関連する Unity ツールを使うための解説が詰まっています。ゲーム業界で働くプロのレベルデザイナーと、ゲームデザイナーやレベルデザイナーとしての経歴を持つ Unity 製品のエキスパートによって執筆されています。

このガイドには 3 つのセクションがあります。パート I は、ゲーム業界で 10 年以上の経験を持つプロのレベルデザイナー、Stefan Horvath 氏と Christo Nobbs 氏により執筆されました。ゲーム開発のプリプロダクションおよびプロダクション段階におけるレベルデザイナーの責任とワークフローについて詳しく説明しています。
説明の内容には以下の事項が含まれます。
- ゲーム開発の準備として、リサーチおよびリファレンスドキュメントを用意する
- メインカメラ、キャラクター、ゲームコントロールをレベルデザインに組み込む
- トレーニング環境でアイデアをテストする
- ペースとゲームプレイの展開を設定する
- 3D アセットでステージのブロックアウトを作り、テストとイテレーションのためにアセットを整理しておく
- 「プレイヤーの動線」を中心にゲームプレイを構成する
- プレイヤーの期待を裏切り、惹き付ける
- 大規模な環境にはプロシージャルデザインの使用を検討する
パート II は、Unity の経験が浅い、あるいは全くないものの、Unity の使い方を学んでみたいレベルデザイナー向けに執筆されています。このセクションでは、Unity ビジュアルスクリプティング、物理演算システムやアニメーションシステムなどのツールを取り上げ、Unity Asset Store の基本を紹介します。

パート III では、ProBuilder や Terrain システムなど、デザイナーが同僚や関係者と共有するクオリティの高いレベルのプロトタイプを作成する際に使用可能なデザインツールについて詳しく解説しています。
さらにスクロールすると、パート I から抜粋したデザインのアイデアの効果的なホワイトボクシング/グレーボクシング方法、パート III から抜粋したデザインのブロックアウト作成に活用できるいくつかの ProBuilder ツールの紹介を読むことができます。
ホワイトボクシング(別名グレーボクシング)とは、実現したいレベルデザインとスタイルに最適なレイアウトを特定するために、シンプルな 3D 形状を作成して配置することです。
ホワイトボックスをシンプルに保つことで、アートやライティング、その他の細部を調整することなくレベルを操作でき、結果的にイテレーションプロセスの迅速化につながります。
レベルデザイナーの中には、3D 空間で作業してゲームエンジンのワークフローに慣れるために、最初に紙のデザインを作成せず、直接ホワイトボックス作業に入ることを好む人もいます。デザイナーは、自分に合った最適なアプローチを自由に決められます。

各ブロック状のアセットには、その用途を特定できるよう、説明的な名前を付けましょう。これにより、環境アーティストが、実際のゲームアセットへの置き換えを行う際に、それぞれのオブジェクトにどのような意図があるのかを理解しやすくなります。
例えば、ブロックは壁を表しているのか、その場合、プレイヤーの視界を遮るために最低限の高さが必要になるのか、といったことです。このアセットは、「wall_interior_w2_h4_l6」と名付けるのがいいかもしれません。このラベルからは、アーティストに伝えるべき重要な詳細であるオブジェクト、その位置、そして寸法を識別できます。また、名前の書式を統一することで、同僚が意味を理解しやすくなります。

利便性のため、3D スペース内にフローティングテキストを使用して意図を示すこともできます。これにより、同僚がエディターにアクセスしなくても、ビルドを実行してプランを見ることができます。
最後に、アセットをラベル付けすることで、作業中のタスク管理が容易になるため、シーンを見る他の人だけでなく、自分自身にとっても便利です。
アセットに説明的な名前を付けるだけでなく、ブロックにマテリアルを適用して意図を明確にすることもできます。これは、インタラクティブなオブジェクトと静的なオブジェクト、プレイできる空間とできない空間、破壊できるものとできないものなどを区別するための便利な方法です。
ホワイトボクシングの意義は、アイデアを試してイテレーションを回すことにあります。最終決定されていないアセットの変更に時間を費やすのを避けるため、デザインの承認が下りるまで、チームは 3D アセットを作成すべきではありません。
他の関連チームのメンバーからの賛同を得て、満足のいくレベルデザインができた後、アーティストはレベル全体で、3D アセットを追加してホワイトボックスの置き換え作業を開始することができます。
チームメンバーは、ホワイトボクシングされたシーンから最終的なシーンを想像するのに苦戦するかもしれません。コンセプトアーティストは、ホワイトボックスにペイントオーバーを行うことで、ビジョンの具体化を手助けしてくれます。これはレベルの 2D 表現なので、3D アセットの作成は必要ありません。一般的に、ペイントオーバーは、レベルのスクリーンショットを撮り、それをペイントしてスタイルやムードを表現します。
実際のシーンをコンセプトアーティストと共有してもいいでしょう。それぞれのブロックが何を表しているかをドキュメント化しておけば、コンセプトアーティストが全体的なビジョンに沿った表現をしやすくなります。


ホワイトボックスシーンを豊かにするもう 1 つの効率的な方法は、既製のアセットを使用することです。
Unity Asset Store には、アイデアを視覚化するために、すぐに使えるアセットが沢山あります。例えば、Synty Studios の POLYGON Prototype Pack は、「組み込まれたメモとマーカー機能を使って、デザインの決定をチームに伝える」のに役立ちます。


ProBuilder を使用すれば、3D モデリングソフトやプロの 3D アーティストに頼らず、Unity でレベルのデザイン、グレーボクシング、プロトタイピング、プレイテストを行うことができます。オブジェクトのスムージング、引き伸ばし、反転、ミラーリング、押し出し、分割、カラーリング、テクスチャリングなど、オブジェクトの作成や操作を行うための数多くのツールが用意されています。
e ブックには、各ツールとその使い方をリスト化した詳細な表が含まれています。この抜粋では、ProBuilder やこれらのツールのうちのいくつかを紹介します。

ProBuilder パッケージをインストールしたら、ユニバーサルレンダーパイプライン(URP)または HD レンダーパイプライン(HDRP)のいずれかに対応するサポートファイル(マテリアル)をインポートしてください。これを行わないと、オブジェクトがレンダリングされない場合があります。ビルトインレンダーパイプラインを使用する場合は、特に必要な操作はありません。

トップメニューの GameObject > ProBuilder > Cube から、ProBuilder のプリミティブなオブジェクトを作成します(例)。ProBuilder には、素早いプロトタイピングに便利なプリミティブな形状が多数含まれています。物理用のメッシュコライダーコンポーネントも持つこれらの形状は、Scene view に追加することができます。
ProBuilder のメッシュは、Unity の通常の GameObject のように動作します。Transform 値を適用したり、コンポーネント、物理、スクリプトを追加したり、アニメーション化したりできます。ただし、標準的な Unity のメッシュは ProBuilder のメッシュとは異なり、ProBuilder オブジェクトに変換しないと、ProBuilder で編集することはできません。

ProBuilder メッシュは、ProBuilder ツールやアクションを一貫して使い、作成や編集により構築するのが一般的ですが、既存アセットの修正にも便利です。例えば、Unity Asset Store からアセットをインポートして、ProBuilder で修正することができます。

スムージンググループは、面と面の間にシャープまたはソフトエッジを作るのに役立ちます。隣接するポリゴンが同じスムージンググループに追加されていない場合、その間にハードエッジができます。車のフロントガラス、またはフロントウィンドウを構成するポリゴンを想像してみてください。これらが 1 つのスムージンググループを構成し、ボンネットを構成するポリゴンは別のグループになります。フロントガラスとボンネットのポリゴンがすべて同じメッシュの一部である場合、両方がスムーズ化されますが、同じサーフェスとしては扱われません。

ProBuilder では、新しい形状はデフォルトですべての面がスムーズ化されます。スムージンググループをより細かく調整するには、Smooth のチェックを外してください(上の画像参照)。
Smooth Group Editor ウィンドウには、さまざまなスムージンググループの設定やプレビジュアライゼーションに役立つオプションがあります。

Preview オプションでは、スムージンググループごとの面のカラーコードの透明度を調整し、ディザ効果で馴染ませることができます。頂点の法線のプレビジュアライゼーションも可能です。
上述の例は、ゲームビューでは以下のように表示されます。


UV Editor で、選択したメッシュのテクスチャマッピングを管理できます。主な作業エリアを確認しましょう。
これは Scene view のものと同じツールバーで、頂点、辺、面を移動、回転、拡大縮小するオプションがあります。
これらのボタンを有効にすると、Scene view から直接 UV マッピング座標を操作できます。これらのボタンは、有効化されている時は色付きで、それ以外の場合は灰色で表示されます。
シェーダーの UV マッピングを編集するには、UV を選択します。ベイクしたライトマップやリアルタイムライトマップを再生成するには、UV2(読み取り専用)を選択します。
選択したオブジェクトの UV マッピングを行うには、2 つの方法があります。
要素を操作して、シェーダーのテクスチャにフィットするようにきれいに配置できます。上の画像では、選択された面が青くハイライトされています。
レベルのボクシングを行う際に色分けを行うと、意図やアイデアをより明確に伝えることができます。例えば、破壊可能な要素を赤で色分けすることによって、チームの他のメンバーにどの要素が破壊可能かを伝えることができます。
Vertex Color 機能で、「プラス」アイコンを選択してカラーパレットを作成します。パレットをカスタマイズして、シーンに必要な色(と色の数)を定義します。
オブジェクトを色付けするには、Scene view でオブジェクトを選択して Apply をクリックします。個々の面にも色を適用し、保存した色のパレットをチームと共有することで、全員が同じ色分け基準を使用するようにできます。

Tools > ProBuilder > Dimensions Overlay から、Scene view で現在選択されているオブジェクトのサイズを示すフローティングラベルを有効化できます。

Probuilder 内の Export 機能を使用するか、FBX Exporter パッケージをインストールして、ステージアセットのプロトタイプを正しい寸法で DCC アプリケーションにエクスポートし、アーティストにブラッシュアップしてもらうことができます。

チームと明確な作業計画を定めることで、アーティストが 3D 環境オブジェクトの適切なサイズと形状に基づいてシームレスに作業できるようになり、スムーズで効率的なデザインプロセスが可能になります。
ProBuilder や Unity Asset Store のツールを使って、「キットバッシュ」(異なるアセットを組み合わせて独創的で新しいものを作ること)することもできます。このアイデアは、模型を趣味とする人たちが、鉄道模型や飛行機のキットをマッシュアップして、独自に作り変えたプロジェクトを構築するという手法に由来しています。

Unity のレベルデザイン e ブックは、プロの開発者、アーティスト、テクニカルアーティスト、デザイナー向けの Unity 上級者ガイドコレクションに新たに追加されたリソースです。すべての e ブックは Unity のエキスパートによって執筆され、無料でダウンロードできます。Unity ベストプラクティスハブでは、上記を含め多くのリソースを掲載しています。