Nordic Entertainment Group:Unity のケーススタディ
一地域のエンターテインメントプロバイダーが、コスト効率の高い方法で最先端のコンテンツを制作し、世界最大手のネットワークやスタジオと渡り合うには、どうすればよいのでしょうか?Nordic Entertainment Group(NENT)は、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランドで運営しているストリーミングサービス、TV チャンネル、ラジオステーションのリーディングオペレーターで、同社のストリーミングサービス Viaplay は北欧だけにとどまらず拡大を続けています。同社の制作会社は、音楽コンペティションやゲームショー、毎週放送される映像作品や完全版の映画などのコンテンツを制作しています。Viaplay はすでに Netflix や HBO と直接的な競合関係にあり、今では AppleTV+ や Disney+ とも対抗しています。
-
課題
ワールドクラスのオリジナルコンテンツを短いスケジュール、少人数のスタッフ、限られた予算で制作する
-
プラットフォーム
ストリーミングサービス、テレビ放送
-
プロジェクトのスタッフ
3 人(初期パイロット)、16 人(シーズン 2)
-
所在地
ストックホルム、スウェーデン
-
目標
ハイエンドの画質
エピソードを短期間で配信する

エンターテインメントスタジオにとっては、オリジナルコンテンツが最重要
NENT Studios Animation のゼネラルマネージャー Jens Köpsén 氏によると、「自社コンテンツを所有することが、このビジネスを成功に導く鍵であることは間違いありません。コンテンツを購入することはコストがかかるため、私たちはオリジナル作品の制作に注力しています。」
事実、NENT は 2020 年に 30 のオリジナル作品を初公開しており、公開中または制作中のオリジナルタイトルは 80 を超えています。Pixar 品質のコンテンツを制作することを目指し、限られた予算内に抑えつつ、制作能力をさらに拡大するために、NENT は Unity のリアルタイム 3D プラットフォームをベースに独自のアニメーションパイプラインを構築しました。

成果
- Unity のリアルタイムアニメーションパイプラインを使用することで従来のレンダリングの 10% のコストでアウトプットが 40% アップ
- 外部のレンダリングコストを増やすことなく定期的にイテレーション
- 視聴者による即座のフィードバックによりアニメーションシーケンスの完成度を高める
- Unity でワークフローを合理化、チームコラボレーションを改善、カスタムパイプラインツールを簡単に統合
- HDRP を活用することで世界最大のスタジオの制作基準を満たし、さらにそれを上回る

新しい形式をいろいろと試す
「HBO や Netflix に対抗するには、私たちが提供するストリーミングコンテンツの品質が、お客様が普段から視聴し期待しているそれらの会社と同じくらいの品質またはそれを超えている必要があります。唯一の問題は、私たちの予算はそれらの会社の何分の一であることです」Köpsén 氏はこう述べています。Unity はその条件を平等にする機会を提供するため、NENT の R&D チームはぜひ試したいと考えていました。「私たちは 2016 年に開催されたオリンピックの一部を Unity を活用して 360 度 VR で放送しました」NENT Studios Animation の制作担当リード Joel Edström 氏はこう述べています。
しかし、当初は VR コンテンツが乏しく、当時の 360 度カメラやツールなどのテクノロジーは、フィルム素材をリアルで没入型の体験に変換する十分な能力がありませんでした。しかし、Edström 氏はこう続けています。「私たちは Unity で作業をすることが本当にお気に入りになったため、代わりにバーチャルな世界を制作しました。Unity のレンダリング機能は、私たちが必要としていた品質を提供してくれました。それは創造性を発揮できるまったく新しい遊び場で、ハイエンドのアニメーションスタジオに匹敵する品質レベルでの制作も可能にしました。」

アセットパイプラインの革新
アセットパイプラインのほぼすべての側面で Unity を使うことで、チームは環境とキャラクターを構築し、それらをリグ付けしました。これにより、アクターは VR ゴーグルを装着してファンタジーの世界に没入し、グリーンバックの前で演じる必要がなくなります。
作品となった最初のプロジェクトは、Fixi に関するストーリーです。Fixi とは、NENT のお子様向けプログラミングのマスコットとしての役割を持つアニメキャラクターです。Fixi の開発が進むにつれて、チームは Unity エディターを使った作業が、従来のワークフローやメソッドとはまったく異なることに気付きました。

即座にイテレーション可能なアニメーション
Unity を使うことで環境やキャラクターの修正、カメラアングルの選択、ライトの調整がリアルタイムで行われたため、クリエイティブのイテレーションをお子様が視聴しているスタジオ内で即座に実行できました。
「アニメーターはお子様から即座のフィードバックをもらえました。キャラクターの外観を変えたり、服を着替えさせたりすると、お子様たちは『やめて!』とか『やった!』と叫びます」Edström 氏はこう述べています。
事実、Fixi 自体の 3D モデルは早期の実験段階ではキツネの姿でしたが、お子様向けのシリーズではリスとして登場しています。「Unity なら、アニメーションやアートワークがかなり進んだ後でも、ルックアンドフィールの調整が本当に簡単です」NENT Studios Animation のエンジニアリングリード Farshid Tavakoly 氏はこう述べています。「Unity のおかげで、実質的に追加コストゼロで相当な回数のイテレーションを実行し、本当にすばらしいシーンを完成させることができました。」

外部レンダリングを排除
チームは Fixi のために精巧な環境を制作し、アニメーションシーケンスは MOCAP スーツを着用したアクターによってリアルタイムでキャプチャされました。「これこそ私たちがアクターを Unity の環境内に連れてくることができるだけでなく、リアルタイムアニメーションを簡単に落とし込むことができることを発見した瞬間です」Edström 氏はこう述べています。
そして最も重要なのは、必要な分だけイテレーションを実行できるということです。従来のアニメーションワークフローでは、チームは 1 つのショットに数時間かけることがあるものの、ウォーターフォールプロセスの最後に到達している場合、さらにイテレーションを実行することはほぼ不可能です。オフラインレンダリングでは、ショットをプレビューするためだけの処理が数時間かかります。その間、他の制作プロセスは停止するため、非常にコストがかかります。NENT にとって、Unity の HD レンダーパイプラインを活用した 3D リアルタイムレンダリングが、このすべてを変えました。

合理化された時間とコスト
「制作にかかる時間とワークフローを大幅に改善する Unity のリアルタイムライティングおよびレンダリングのパワーは、どれだけ誇張してもし過ぎることはありません。設定したエフェクトやセットアップについて即時のフィードバックが得られ、最終的な 4K フレームを数秒でプレビューできます」Tavakoly 氏はこう述べています。そして、Edström 氏はこう付け加えています。「Unity なら、従来のレンダリングメソッドでかかっていたコストの 10 分の 1 で済み、アウトプットは 40% ほど増えました。」

パイプラインのあらゆる部分のカスタマイズを行う
グループのエンジニアとして、Tavakoly 氏は NENT の開発者にとって Unity にやらなければならないことを正確にやらせるのは簡単なことであると述べています。「Unity には柔軟性があります。私たちは長年にわたって数多くのツールを構築してきており、Unity をカスタマイズして当社の他のパイプラインコンポーネントが含まれる堅牢なシステムを作成できました。」
Unity は非常に拡張性が高いため、NENT は TV 番組からのリアルタイムアニメーションを VR または AR プロジェクトに使うなど、コンテンツを 1 つのプラットフォームから別のプラットフォームに簡単に作り変えることができます。放送チームは、たとえば、スポーツ放送に AR レイヤーを追加したり、リモートでライブのアスリートをホログラムとして挿入し、アナウンサーのチームに参加させたりすることができます。
「私たちはコンテンツの制作に関しては非常にスマートでなければならず、これが私たちがそれを実現する方法です」Tavakoly 氏はこう述べています。

Unity で「不可能」を可能にする
Unity によって実現するアーティスト、デザイナー、エンジニア間のコラボレーションは、大きな強みをもたらしています。「Unity なら、以前はプログラマーの作業を待たなくてはならなかった作業をクリエイターがすぐに行うことができます」Tavakoly 氏はこう述べています。スタジオは、各コントリビューターがより多くのことを達成できるため、全体としてコントリビューターがほとんど不要であることに気付きました。
移り変わりの激しい業界のリーディングクリエイターとして、NENT は一貫して自社のテクノロジーのクリエイティブな使用をできるだけ遠くに押し出しています。Unity はその戦略の大部分を占めます。Köpsén 氏はこう述べています。「私たちは、競合他社よりもはるかに先に進みたいと考えています。」
NENT は結果でも他のクリエイターを圧倒しています。「ある巨大なアニメーションスタジオから来客がありました。デモを見た後、その品質の高さについてコメントしていました。私はこれは 5 人で制作したものであると伝えました。それに対してその人たちは『そんなの不可能だ』と言っていました」Tavakoly 氏はこう述べています。「これこそが Unity で作業することでもたらされるパワーです。」