都市のデジタルツインを使い、パリを再構築する

デジタルツインは、建築家や建設会社、不動産デベロッパーが都市部における成長計画の立案にまつわる方法を変化させました。しかし、これはコミュニティやその住民にとってどのような意味を持つのでしょうか。Vectuel 社はリアルタイム 3D の力を借りてパリのデジタルツインを制作し、より効率的に、よりコラボレーションを密にした形で、都市の未来を描くための支援をしています。これは、市民がみずから自分たちの住むコミュニティの未来を描き、作り上げていくための力を与えることを目的としたものです。
ビジュアライゼーションソリューションを提供するフランスの Vectuel 社は、10 年以上かけてパリ広域都市圏を Unity のリアルタイム 3D を使って再現しました。現在、その巨大なデジタルツインでは、1,000km² の領域内に存在する既存のもの、計画中のもの双方含めて 200 万件以上に及ぶ建造物が再現されています。
市の職員や建築家は Vectuel 社と協働して、建物の設計、審査、建設をより効率的に行っています。都市のインフラのデジタルレプリカを作成し、Unity のクラウドストリーミングソリューションである Furioos で共有することで大規模なビジュアライゼーションが可能となり、建築スタイル、色彩、フロアプラン、機器の配置などの決定プロセスが改善され、判断が迅速に行われるようになります。

Vectuel 社のデジタルツインの中で、ユーザーはパリ広域都市圏の特定のエリアの不動産に触れることができ、広域都市の文脈の中でプロジェクトを解釈することができます。Vectuel 社は、平面から撮影した地形写真や、フランス国立地理情報・森林情報研究院(Institut national de l’information géographique et forestière)から提供されたデータをもとに、GIS(地理情報システム)とBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)を用いて 3D モデルを作成しました。Vectuel 社は 3ds Max を使用してデータを準備し、Unity Pro に、同社独自のソフトウェアである Virtual City を使い、Pixyz Plugin も併用しつつ、そのデータをインポートしました。
Vectuel 社の CEO である Grégory Morlet 氏は、「Unity に移行したのは、ウェブを含む複数のデバイスにパブリッシュできるからです」と語ります。「お客様や一般の方がどこからでも簡単にプラットフォームにアクセスできることが必要なので、これは非常に重要なことでした。Unity の製品は、このプロセスを容易にしてくれました」と述べています。
Vectuel 社の統一されたプロジェクトビジョンにより、デジタルツインをさまざまな役割の従業員が使えるようになりました。従業員はどの現場からでもモデルにアクセスできるだけでなく、近隣に建設される予定の建物を事前に見ることができます。Vectuel 社のビジュアライゼーションソリューションは、統一されたビジョンに基づくサービスに誰もがアクセスできるようにするという「all-for-one」の原則を強調しています。
これらの機能は、120GB あるモデルをホスティングしている Furioos などのクラウドサービスによって実現されています。Furioos を使う以前、Vectuel 社は、モデルの膨大なデータを収容できるプラットフォームが見つからず、苦労していました。Furioos を使うことで共同作業のワークフローの側面をまったく犠牲にすることなく、Vectuel 社はモデルをスムーズに動作させる環境を手に入れました。Furioos を使うことで関係者はどのウェブブラウザからでもモデルを見たり操作したりできるようになり、チームのコラボレーションがさらに容易になりました。

Vectuel 社のデジタルツインのユーザーフレンドリーなインターフェイスでは、リアルなインフラモデルから別のモデルへと簡単に切り替えることができるようになっています。このインターフェイスはパリ市と共同で行われているさまざまなプロジェクトに使用されており、関係者が自分の環境の中で、計画中のインフラがどのように見えるのかを確認できるようにする上で役立っています。これにより、市民はまったく新しい方法で街づくりに参加できるようになり、地域の将来に対する住民の声が反映され、地域住民の総合的な満足度の向上につながります。

Vectuel 社のモデルの中では現在約 250 のプロジェクトが進行中で、その中には、ヨーロッパ全体で最大の交通プロジェクトであるグラン・パリ・エクスプレスの拡張工事が含まれています。このプロジェクトはまた、2024 年のパリオリンピックをはじめとする、フランスのすべての都市計画プロジェクトにもつながっています。グラン・パリ公社(Société du Grand Paris)は、Vectuel 社と協力して、パリの主要交通機関の拡張計画を進めています。この計画では、4 つの新しい鉄道路線と、互いに接続された 68 の新しい駅が設置され、パリ市民の通勤時間を大幅に短縮します。
デジタルツインの中で拡張計画を立てることで、エンジニアや建築家は、各鉄道路線や駅が周辺地域にどのような影響を与えるのか、歩行者や車両の交通の流れ、さらには都市部の設計や開発にどのような影響を与えるのかを確認することができます。このモデルを使って、建設が始まる前に、問題点や改善すべき点を特定することができます。また、地元の方々には、プロジェクト案を見ていただき、モデルを使って新しい鉄道路線や駅の位置を確認してもらいます。空間データの可視化、建設のシミュレーション、および未来への展望を実際に目に出来ることは、都市のデジタルツインを使うことで得られる重要な利点の一部です。
Vectuel 社のイノベーション部門ディレクターである Teïlo François 氏は、「私たちは、パリの人々が開発案に対するフィードバックを行う際に、十分な情報に基づいた意思決定を行い、自分たちの住む地域が将来どのようになるかを知り、コミュニティの成長の一端を担うことができるようにしたいと考えています。Unity がその手助けをしてくれています。」
グラン・パリ・エクスプレスの最初の駅はまもなく建設が開始され、他の駅の計画もデジタルツインを使って引き続き進められます。拡張が完了すると、1 日あたり 200 万人以上の人々が利用することになり、200km の新しい線路の全体にわたり、駅には 2 ~ 3 分ごとに列車が到着するという環境になります。
Vectuel 社は、提携先の顧客を増やしてデータやディテールをさらに作り込み、モデルを拡大していく予定です。進化するパリのデジタルツインは、パリに新たな光を当て、市民を都市開発に深く巻き込んでいます。
Unity のデジタルツインソリューションがどのようなメリットをもたらすのかをご紹介します。