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Match Triple 3Dの分析:Lihuhuの収益化戦略からゲーム開発者が学べること

ARJUN GOHIL / UNITY Senior Game Analytics Consultant
Dec 12, 2024
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モバイルダウンロード数が1,000万回を超えるLihuhuのMatch Triple 3Dは、パズルゲームジャンルにおいて業界の標準となる存在です。特に、効果的な収益化戦略が成功の大きな要因となっています。

Lihuhuは多角的な成長戦略を持っており、その中でも一貫している要素が専門家との連携です。LihuhuはUnityのゲームデザイン&収益コンサルティングと提携し、データに基づいた改善を行うことで、Match Triple 3Dの収益化を最適化しています。

UnityのシニアゲームアナリティクスコンサルタントであるArjun Gohilが、Match Triple 3Dの成功を支える最も重要なポイントを解説します。それでは、詳しく見ていきましょう。

Match Triple 3Dのゲーム戦略

Match Triple 3Dは、従来のマッチ3ゲームに独自の要素を加えた作品です。プレイヤーはアイテムをマッチさせるだけでなく、家の中のおもちゃを片付けるというタスクもこなさなければなりません。

ゲームの基本ループはシンプルで、プレイヤーが3つずつアイテムを集め、部屋がきれいになると次のステージへ進むというものです。

このゲームのプレイヤーは、マッチを成功させることや部屋を片付けることで得られる達成感を原動力にプレイを続けます。ステージが進むにつれて、より複雑な課題に挑戦し、スキルを磨いていく楽しさがあります。

収益化の概要

Match Triple 3Dでは、ハイブリッド収益化モデルを採用しており、以下のような手法を組み合わせています。

アプリ内課金(IAP):コインやブースターの販売

広告収益:動画リワード広告やインタースティシャル広告(全画面広告)

各ステージをクリアすると、プレイヤーはゲーム内通貨(コイン)を獲得できます。このコインはブースターの購入に使用でき、難易度の高いステージでは追加リソースが必要になるため、プレイヤーはアプリ内課金または動画リワード広告の視聴という選択肢を持ちます。この仕組みにより、課金プレイヤーと非課金プレイヤーの両方から収益を得ることが可能になります。

ここからは、Lihuhuの広告枠戦略とそのゲームループとの相性について、詳しく見ていきましょう。

プレイヤー重視の広告戦略の構築

どのゲームにおいても、プレイヤーのエンゲージメントが収益性につながるため、プレイヤーの満足度を維持しながら広告収益を最大化することが重要です。そのためには、広告がゲーム体験を妨げるのではなく、ゲームの基本ループに組み込まれることが求められます。

Lihuhuは、以下のような形で広告戦略を最適化しています。


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離脱を防ぐための復活動画広告

Match Triple 3Dでは、広告をゲームループの終わりに配置することで、自然に広告を見てもらう工夫をしています。例えば、パズルゲームのステージが長くなると、途中でライフが尽きるプレイヤーが出てきます。そこでLihuhuは、復活動画広告を導入しました。

- プレイヤーがライフを失うたびに「広告を視聴して復活する」というオプションを提示

- プレイヤーはゲームを継続でき、Lihuhuは広告収益を確保

さらに、広告を見たくないプレイヤー向けに100コインを支払うことでスキップできる選択肢も提供し、プレイヤーのストレスを最小限に抑えています。

適切なタイミングでのインタースティシャル広告配置

インタースティシャル広告は、配置の仕方によっては離脱率を高めるリスクがあります。Lihuhuは最初、Match Triple 3Dのプレイ序盤にインタースティシャル広告を導入していましたが、これでは「広告が多すぎる」と感じさせ、プレイヤーの離脱を招く可能性があると判明しました。

そこで、次のような最適化を行いました。

- ゲームの最初の1〜2週間はインタースティシャル広告を表示しない(特にカジュアルゲームでは1週間、RPG・シミュレーションでは2週間推奨)

- プレイヤーの習熟度が上がってから広告を導入することで、離脱を抑えながら収益を最大化

アプリ内課金(IAP)の価値を理解してもらう

広告だけでなく、アプリ内課金(IAP)もMatch Triple 3Dの重要な収益源です。Lihuhuは、プレイヤーが課金アイテム(ブースター)の価値を理解しやすいよう、次の施策を導入しました。

無料ブースターの提供

Match Triple 3Dではブースターを使うのが一番手っ取り早い方法ですが、多くのプレイヤーはブースターを買うことをためらいます。そこでLihuhuは、プレイヤーにブースターを紹介する際に、無料でブースターを1つプレゼントするという直感的な戦略を実施しました。

プレイヤーがあるレベルをクリアするのに苦労しているとき、自動的に3マッチを作る無料のマグネットブースターを受け取ったとします。この無料ブースターはプレイヤーの上達をサポートし、ゲームを続けてレベル達成できるようにします。

当社のデータによると、ブースターを体験したプレイヤーは後で実際にブースターを購入する可能性が高くなります。プレイヤーを課金者に変えるこの手法は、あらゆる収益化戦略にとってのゲームチェンジャーとなるでしょう。

重要な新機能の紹介

モバイルゲームには、普段からモバイルゲームをプレイしているわけではない人々を含む、非常に幅広いオーディエンスがいます。つまり、開発者はわかりやすく直感的なオンボーディング体験を提供する必要があります。例えば、Match Triple 3Dのオンボーディングを簡素化するために、新規プレイヤーはメインメニューをスキップし、自動的にレベル1から始めることを提案しました。

また、ゲームを一時停止する必要がある場合でも、各新機能やその道しるべをユーザーに示すことをお勧めします(例:「これをドラッグしてください」、「ここをタップしてください」)。最適化された収益化戦略を構築するために、サインポストはアプリ内課金にとって特に重要です。結局のところ、プレイヤーがアプリ内課金の仕組みを明確に理解していなければ、課金はしてもらえません。

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適度な難易度変化の導入

ゲームを開発するとき、多くの開発者は難易度カーブを「レベルが進むにつれて徐々に難しくなる」という直線的に設定する傾向があります。理論的には、これは素晴らしい戦略であり、Lihuhuも過去に利用したことがありますが、各レベルがより難しくなるにつれて、開発者はプレイヤーの減少を目の当たりにするでしょう。それはなぜか?急な難易度の上昇は必ずしもやりがいを感じさせず、プレイヤーにあまりポジティブな体験をもたらさないからです。

そこでUnityは、Match Triple 3Dの各レベルの難易度を変えることを提案しました。例えば、4つの簡単なレベルから始めて、難しいレベル5にジャンプするのではなく、3つの簡単なレベル、2つの難しいレベル、そしてもう1つの簡単なレベルという異なる設定を推奨しました。こうすることで、ゲームの進行が予測不可能になり、プレイヤーはレベルをクリアしたときの高揚感や、新たなチャレンジに直面したときの興奮を継続的に味わうことができます。


Unityはこれを「Sinks & Sources戦略」と呼んでいます。マネタイズの観点からも、難しいレベル(Sinks)では広告視聴や課金が増え、簡単なレベル(Sources)ではゲーム内通貨を貯めやすくなるため、収益とエンゲージメントのバランスを最適化できます。

これによりLihuhuのような開発者は、収益を最大化すると同時に、長期にわたってゲームを魅力的に保つことができます。

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注:Sinks & Sourcesは2023年第3四半期に収集されたデータに基づく。

Lihuhuは、Unityのゲームデザイン&収益コンサルティングチームと協力し、Match Triple 3Dの収益化戦略を継続的に測定・分析・改善することで、収益とプレイヤー体験の両方を最大化しています。

このように戦略的に広告と課金要素を組み合わせることで、より高いエンゲージメントと収益の成長を実現できるでしょう。