Golf Club: Wasteland

制作者: Demagog Studio
The studio
エッジとパンチの効いたクリエイターたち

セルビアのベオグラードで高校時代を過ごし、固い絆で結ばれた友人たちが、大学卒業から数年を経て、また何かをやろうと再集結しました。そこから生まれたのは、ありがちなエンジニア集団ではなく、激動する世界の時事問題に関連するフィルム、ゲーム、音楽を手がけるチームでした。

Demagog Studio は非公式には 2013 年に発足しました。スタジオを率いるのは、受賞歴のある映像制作者にしてコンテンポラリーアーティストの Igor Simic 氏です。彼はニューヨークのコロンビア大学で映画と哲学を学んだ後、ベオグラードに戻っていました。 

チーム名が一般市民の無知につけ込む指導者(demagogue)にちなんでいることからもわかるように、このスタジオのゲームには政治的、社会的に深い意味が込められています。初めてのタイトルは、金融危機を意識したエンドレスランゲームの『Crisis Expert』でした。プレイヤーはショッピングカートになって、利益最大化を目指して経済グラフ上を疾走します。翌年には、児童労働をテーマにした風刺ゲーム『Children’s Play』を公開しています。

「これら初期のゲームは、どちらかというと試しに作ってみたという感じでした。私たち全員、ゲームを制作したことがなかったからです」と Simic 氏は語ります。2017 年、Demagog は正式に法人化し、実験を次の段階に進めるべく、モバイルゲーム、ビデオ、音楽など複数のメディアにまたがるアートプロジェクトを立ち上げることにしました。

Igor Simic, Creative Director; Nikola Stepković, Art Director; Shane Berry, Sound Designer/Composer; Ivan Stanković, Technical Lead; Miloš Milojević, Level Designer; Miloš Mihajlović, Programmer; Nevena Janković, Marketing

Igor Simic, Creative Director; Nikola Stepković, Art Director; Shane Berry, Sound Designer/Composer; Ivan Stanković, Technical Lead; Miloš Milojević, Level Designer; Miloš Mihajlović, Programmer; Nevena Janković, Marketing

The project
惑星規模で風刺をティーアップ

『Golf Club: Wasteland』は、文明崩壊後に火星に移住した超富裕層についてのストーリーが展開されるモバイルゲームです。この新しい火星住民は、今や荒れ地となった地球でゴルフをして暇を潰しています。プレイヤーが操るのは、故郷への最後の一人旅に出かけるノスタルジックな宇宙船のパイロットです。

のんびりした「ゴルフプレイ」の合間に 3 層のストーリーが隠されています。まず、30 あるそれぞれの章は、画面が読み込まれるまでの間にタイトルのように表示される風刺の効いたフレーズから始まります。次に、サウンドトラックをよく聴いてみると実はそれがラジオ局の放送であり、火星での生活についての最新情報を定期的に伝えるものであることがわかります。最後に、高得点を獲得すると孤独なゴルファーの日記を見ることができ、徐々に背景が明かされていきます。これがプレイヤーを、より高いスコアを目指して特定の章に再チャレンジしようという気にさせます。

クリエイティブなホールインワンを達成

荒れ地にいるにもかかわらず、プレイヤーは場違いなオブジェクトとまばゆいネオンライトに囲まれた独創的なレベルデザインと見事なアートスタイルに魅了されます。2018 年 6 月に iOS 限定でリリースされたにもかかわらず、REBOOT Develop の「最も革新的なゲームプレイ」第 1 回受賞作品に輝きました。REBOOT ではゲームオブザイヤーにもノミネートされ、The Big Indie Fest ではベストストーリー賞に輝いています。Android と Nintendo Switch でのリリースは今年中を予定しています。

ストーリーでは充実したサウンドトラックと何本かのミュージックビデオがフィーチャーされています。Radio Nostalgia from Mars のサウンドトラックは Igor 氏と、東京をベースに活動していた DJ 兼サウンドデザイナーで現在はパリ在住の Shane Berry 氏のコラボレーションによるものです。オリジナルソング 7 曲と、ラジオ局に電話をかけてきた火星の住民の話を録音したものが 5 本収録されています。音楽がゲームのストーリーに深みを加えているだけでなく、シンセウェイヴ、テクノ、アカペラ歌唱の組み合わせは iOS のゲームコミュニティで高い評価を集めています。

雰囲気のあるミュージックビデオにはゲーム用に作成されたアートがふんだんに盛り込まれていて、2D でありながら 3D のように見えます。ゲームと同様、ビデオでも冷戦と現在の政治情勢が独創的な表現で描かれます。Igor 氏によると、ビデオにはあえてストーリー性は持たせず、感情の起伏をもたらすムードボードとして機能するようにしているとのことです。

Radio Nostalgia from Mars - Distant Thunder
The reveal

「ゲーム内のいくつかのエフェクトについては、照らされている感じや水のエフェクトを表現するために、ポストプロセッシンググレインのようなカスタムシェーダーが必要でした。モバイル効率の高いシェーダーの作成が課題でしたが、Unity の充実したドキュメントを参考にしながら何とか克服しました」とテクニカルリードの Ivan Stanković 氏は述べています。

とはいえ、ゲームはグラフィックスとゲームプレイだけでは成り立ちません。サウンドと UI がストーリーを支える重要なコンポーネントでした。Demagog は環境音についてはすべて FMOD を使用する一方で、すべてのレベルのサウンドデザインについてはシンプルに、リバーブゾーンやオーディオフィルタリングといった Unity のオーディオ機能を使用しました。インターフェースについては、優秀なチームがアニメーターと Unity UI 要素だけを使って洗練されたメニューと滑らかな遷移を実現しました。「UI の変更は 4 回にもおよんだので、この使いやすさがありがたかったです」と Igor 氏は振り返ります。

 

冷戦の廃墟の上に築かれる世界

『Golf Club: Wasteland』の世界は既成概念にとらわれず、どこか魅力的です。社会主義時代の建築物の合間にネオンが瞬きます。ゲーム内のある建物は、1977 年にベオグラードに建てられた有名なブルータリズム様式の 36 階建て超高層ビル「Western City Gate」と酷似しています。

そんな目を引く世界を作り上げるため、チームはスプライトエディターをはじめとする Unity の充実した 2D ツールセットを活用してゲームレベルの大半を構築しました。ゴルフボールの軌道計算にはビルトインの物理演算エンジンが採用されましたが、葉、煙、灰にはパーティクルシステムが採用されました。チームは標準搭載の豊富な機能を利用しつつ、廃墟と化した地球を表現する独特のアートスタイルを実現するために、いくつかカスタムソリューションも開発しています。

パイプラインを減らして創造性を引き出す

ゲームのミュージックビデオには Unity の汎用性が不可欠でした。ゲームの 2D アセットとテクスチャを新しい 3D 要素とミックスすることで、臨場感を高めています。

Unity のリアルタイムレンダリングで迅速なイテレーションが実現されています。アニメーションシステムに新しい Post-Processing Stack とオフラインレンダリングを組み合わせたことで、ビデオの最終的な外観を早い段階で固めることができました。「そのおかげで技術的な問題や、データラングリング、下流工程で発生する問題の対策に時間を割かれることなく、ビデオ自体に時間をかけられました」と Igor 氏は言います。

結局、追加の後工程が発生しなかったことで、従来型の 3D アニメーションパイプラインと比較して制作時間が 50% も短縮されました。このように制作を最適化することが、Demagog Studio のようにメディア横断的に作品を作り、エッジとパンチの効いた表現を模索するための貴重な時間を必要としている最先端のアーティストには大きな利益になります。要するに、世界を変えられるなら特に、型破りに勝るものはないということです。

Demagog Studio にようにユニークでゴージャスな 2D 世界を作りましょう。

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