SHoP Architects の Unity Reflect ケーススタディ
受賞歴に輝く建築事務所である SHoP Architects は、建築物を構想から物理的現実にするためのプロセスをさらに効率化しようと取り組んでいます。プロセスを迅速化するため、Unity が提供する建築設計、エンジニアリング、建設(AEC)分野向けの新製品 Unity Reflect を、業界で初めて取り入れました。
リアルタイム BIM 体験を Unity Reflect で作成
ニューヨークに本社を構える SHoP のチームは 200 名のスタッフから構成され、本拠地だけでなく世界中で華やかなプロジェクトに取り組んでいます。Google から米国国務省に至るまで、SHoP Architects は幅広い顧客を抱え、コラボレーションを促進し実用的かつ美しい建物を作るためにテクノロジーを活用しています。
SHoP のインタラクティブビジュアライゼーション部門に所属する Adam Chernick 氏と Christopher Morse 氏は、Unity Reflect を使って、設計の不備を初期段階で発見するとともに、問題の早期解決や構築時間の削減につなげようとしています。彼らは Unity Reflect のベータプログラムを経験することにより、同事務所が設計と建設の齟齬をなくすうえで、その製品が重要な役割を果たしていると納得しています。
その成果は以下のとおりです。
- リアルタイム 3D 体験の作成を効率化し、数日かかっていた大規模設計モデルの最適化を数分に短縮
- BIM に誰でもアクセス可能にしたため、ユーザーはどのデバイスからでも情報を入手可能に
- 主な関係者間のコミュニケーションを改善し、変更指示、建設期間、コストを削減
AEC 業界に新しいコミュニケーションの形を提供
SHoP Architects は、従来とは異なる設計アプローチにより AEC 業界で評価されています。従来のプロセスを改革するうえで事務所が目標の 1 つとするのは、2D による成果の提示を止めることです。
SHoP にしてみれば、すでに 3D で設計や構築を行っているので、プロジェクトも 3D で提示すべきなのです。
SHoP は、建築業界ではあまりないとはいえ、増えつつあるプロジェクトを直接 3D で組立業者に提供するこのアプローチに大きな価値を見出しています。また、SHoP は事務所全体のコラボレーションツールとしてバーチャルリアリティ(VR)を活用しています。VR で行われる定期的なデジタル設計レビューにより、クライアントや設計リーダーはその空間に没入し、適切なフィードバックを提供することができます。
イノベーションへの取り組みを強化するため、SHoP は 2017 年にインタラクティブビジュアライゼーションの専門チームを発足させました。このチームはレンダリングや図形の枠を超えて、動的でインタラクティブな方法により、事務所内だけでなくクライアント、コンサルタント、広範なプロジェクトチームに対しても設計情報を伝達します。
BIM からリアルタイム 3D になるまでを数日から数分に短縮
SHoP のインタラクティブビジュアライゼーションチームはゲームエンジンとリアルタイムテクノロジーを使用し、設計プロセスのあらゆる段階で関係者とコミュニケーションを取ることができます。
Unity にプロジェクトを取り込む従来のワークフローでは、FBX や Excel 経由で BIM メタデータからジオメトリを切り離し、その後 Unity でやり直す必要があります。Chernick 氏と Morse 氏は、 プロジェクトがアクティブな開発段階で設計変更を行っている場合であれば、60% の時間を手のかかる面倒な処理に費やしただろうと見積もっています。
「チームが抱える設計の問題を解決するツールを構築することには、やりがいを感じます」と Morse 氏は言います。「しかし現実には、モデルのエクスポート、最適化、Unity へのインポートにほとんどの時間を費やしていました。」
さらに悪いことに、大変な仕事にもかかわらず無駄に終わることがよくありました。Chernick 氏や Morse 氏が、設計チームへのツールのインポート、開発、展開を完了したときには、イテレーションや持続的な変更の速度に間に合わず、その設計はすでに古くなっていることがよくありました。
Unity Reflect のプラグインと Autodesk Revit などの設計アプリケーションのおかげで、待望のソリューションが誕生しました。SHoP の設計チームは、さまざまなシステム(建築、MEP、構造など)からワンクリックでモデルをリアルタイム 3D に取り込むことができます。ジオメトリにも BIM メタデータにも手を加える必要はありません。「Unity Reflect なら、データの準備に悩まされることがなくなります」と Morse 氏は話します。「ツールの構築に集中することができます。」
Unity Reflect は設計アプリケーションへのライブ接続を維持できるので、新しい設計の再インポートは Chernick 氏や Morse 氏の通常の業務ではなくなりました。「これこそ待ち望んでいたテクノロジーです」と Chernick 氏は喜んでいます。
ジョブに最適なツールを柔軟に構築
データの転送と最適化の問題が解決し、Chernick 氏と Morse 氏は、設計プロセス全体を通してインタラクティブな没入型の体験を開発し構築することに多くの時間を使うことができます。彼らの設計チームが取り組む問題が、内部設計や、火災避難条例への対応、ワークスペースの証明、人の往来への対処などいずれであれ、それに応じて最適なツール、つまりデスクトップアプリケーションや没入型 VR によるウォークスルー、モバイルの拡張現実(AR)をモデルに利用できます。
Unity Reflect はコーディングのスキルを必要としませんが、拡張性の高い製品です。Chernick 氏や Morse 氏のような Unity 開発者は、ビューアーリファレンスアプリケーションソースコードを使用したり、Unity Reflect のプレハブを Unity Editor に取り込んだりすることで、Unity Reflect をベースに柔軟に構築し、さまざまなプラットフォームにまたがるカスタムのリアルタイム BIM アプリケーションを作成することができます。
そうした SHoP アプリケーションに、制御環境下で音響波面を可視化し体感できる VR シミュレーションがあります。リアルタイムのインタラクティブなシミュレーションにより、設計者は変更(天井の角度の調節など)を加えてからすぐに音響への影響を確認できます。
SHoP はアプリケーションにジオメトリを送信するほか、材料に関するデータも送信します。音の反射や吸収に関する音響特性は、材料ごとに異なります。Chernick 氏と Morse 氏は以前はこのデータを利用できませんでしたが、Unity Reflect があれば、Revit でジオメトリの形状または材料の物理的特性を変更し、こうした更新を VR にライブで反映できます。
「このインタラクティブなツールの作成は、 Revit から 変更をライブで体験に反映し、BIM データを保持できる Unity Reflect なしでは不可能でした。設計が音響に与える影響を評価する新しい方法をチームに提供しています」 と Morse 氏は話します。
建設がさらに効率化
Unity Reflect を採用することで、SHoP は設計と建設の連携を向上し、現場でのコミュニケーションを改善しました。SHoP は Unity Reflect と Unity Pro を使用して、代表的なプロジェクトの 1 つとなる 9 DeKalb のために独自のリアルタイム BIM アプリケーションを開発しました。このプロジェクトは、ブルックリンで最大の高さを誇る 73 階建て 1,066 フィート(325 メートル)の高層マンションで、現在建設中です。この大プロジェクトを開発した総合建設会社は JDS Development Group です。
アプリケーションでは、BIM データに基づきドキュメントや情報を可視化します。現場の技術者は、進行中の実施設計図に SHoP の設計を AR でオーバーレイできます。また、正確な位置と結びついた Revit からの建設ドキュメントを前面にすることもできます。
「空間的に把握できると同時に、必要なすべての情報にすぐにアクセスできるため、実施設計図の使い方が柔軟で体感できるものになりました」 と Chernick 氏は言います。「最終的には、何百ページもの文書をめくらなくてもタブレットを数回タップするだけで済むようにし、現場の協力建設会社の時間節約につなげるつもりです。」
このアプリは現在コンセプト実証段階ですが、SHoP の最終目標は、こうしてカスタマイズして構築されたツールをすべてのプロジェクトで現場に使用することです。品質保証(QA)や品質管理(QC)に没入型の直感的な方法を SHoP が提供することで、総合建設会社の建設期間を短縮できます。文書や建設の指示が正確になることで、ミスが減り、大幅な短縮につながります。
平均では、建設プロジェクトの資金の 8 ~ 14 % が変更指示に費やされています。SHoP が通常請け負う規模のプロジェクトでは、このテクノロジーで変更指示を 1 つ減らすだけでも、数百万ドルのコストと貴重な時間を節約できます。