Playspace:Unity のケーススタディ
ゲーム開発者の寄せ集めであるチームを、お互いの利益のために緊密に連携させるにはどうすればよいでしょうか?Playspace では、エンジニアは Unity を使っていましたが、アーティストは Unity の機能をどのように活用すればよいかわかっておらず、そこにコラボレーションは存在していませんでした。同スタジオが Unity トレーニングプログラムに申し込んだのは、この理由からでした。そして、わずか数セッションと楽しいハッカソンの後、事態は好転しました。
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課題
アーティストとエンジニアとの間のコラボレーションを増やし、制作をスピードアップして市場投入までの時間を短縮すること
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プラットフォーム
Android、iOS、ブラウザー(Facebook)
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チームメンバー
40
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所在地
パルマ(マヨルカ)、スペイン

Flash から Unity へ
2011 年に Alfonso Villar 氏が創立した Playspace は、Facebook 向けに Flash ベースのカジュアルゲームを制作していました。モバイルゲームへの移行を経て Playspace は 40 人を超えるチームとなり、今では 12 本のクロスプラットフォームゲームをサポートしています。『Parcheesi』は市場に出ている中で最もソーシャルの要素が強いバージョンであり、『Loco Bingo』はスペインとイタリアで最も収益を上げているビンゴアプリです。それらは、6 億 100 万ドル規模(出典:Sensor Tower)と言われる世界のソーシャルビンゴゲーム市場において Playspace を大きな存在にしています。
「Unity を採用したことは、Playspace にとって非常に大きな出来事でした。『Loco Bingo』をベースコードから Unity へ数か月かけて再構築し、制作した 12 本のゲームすべてを 1 年以内に Unity に統合しました。Unity なら、一度開発すれば、複数のプラットフォームにすぐに展開できます」と CEO の Villar 氏は言います。各プラットフォームのスペシャリストを雇うのではなく、全員がゲームプレイに注力できるようになりました。

成果
カスタマイズされたトレーニングプランは、Playspace に次の利点をもたらしました。
- アーティストがゲームの新しいバージョンに費やす時間を 6 分の 1 に削減
- 開発者とアーティスト間のコラボレーションを大幅に改善
- より一貫した正確な開発スプリント期間の見積もり
- Unity のツールをマスターする方法を学ぶことでアートワークやゲームの品質が向上

スタジオのプロセスと専門知識のギャップを認識
Playspace が Unity のリアルタイム開発プラットフォームに移行した当初は、クロスプラットフォーム制作の詳細を詰めるのを Unity がサポートしてくれたため、エンジニアはすぐに Unity のプラットフォームのエキスパートになりました。「問題は、Playspace のアーティストは Flash での作業に慣れていたことでした」と Villar 氏は言います。Playspace には Unity を使って作業をしていたアーティストが 1 人いましたが、それ以外にコラボレーションはまったくありませんでした。デザイナーは必要なものを得るためにタスクをアーティストに割り当て、アーティストはファイルを作成してエンジニアにハンドオフし、エンジニアはそれを受け取ってインポートする、といったような感じでした。典型的な、時代遅れで非効率なワークフローです。
そして、この非効率性は品質にも悪影響を及ぼしていました。チームのリードアーティストである Juan Gómez 氏によれば、「アートワークのイテレーションはあったとしてもごくわずかであったため、継続的な改善はほとんどありませんでした」。開発者とアーティストが同じツールを使用していなかったため、アーティストは Unity の膨大な機能セットを活用してゲームの品質を改善する方法をまったくわかっていませんでした。そして、Unity のことを知っていた 1 人のアーティストが会社を辞めたとき、Gómez 氏と Villar 氏は、もっと良い解決策を見つけなければならないことに思い至ったのです。

Unity プロフェッショナルトレーニングを知る
Villar 氏は、別のチームが Unity のスキルに関する特定のギャップを埋めるのに、Unity トレーニングワークショップが役立ったことを知りました。Villar 氏が少し調べてみたところ、そのプログラムが手頃で非常に便利であることがわかりました。同チームのニーズについて Unity のインストラクショナルデザイナーと話し合った後、Villar 氏は 3 段階に分けて提供されるトレーニングプログラムを手配しました。その内容は、Unity のビルトインツールの使用方法をアーティストに教え、アーティストとエンジニアのコラボレーション方法を改善するプログラムでした。
最初のトレーニングは、8 日間にわたってオンラインでライブ配信され、アーティスト向けの基本的なトレーニングと、Unity にすでに精通していたエンジニアのための上級者向けのコンテンツが提供されました。2 回目のトレーニングはその 1 か月後で、3 日間で 12 時間かけて行われるハッカソンという、さらに楽しい内容でした。
チーム Fire とチーム Ice が完全マスターへの道を切り開く
Unity トレーニングハッカソンは、教室での学習を強化する自己学習型のグループワークです。このケースでは、参加者が新しいスキルを適切に意味のある形で使用できるように、Unity のインストラクショナルデザイナーと Playspace の共同でプロジェクトが制作されました。参加者はチーム Fire かチーム Ice に振り分けられ、ひと月前の最初のトレーニングフェーズで学習したツールやテクニックを使ってゲーム制作に取り組みます。チームにはアーティストと開発者が混在し、営利的なプロジェクトのプレッシャーがない中で共同作業を通じて関係性を築きながら、Unity での制作中に考え方を一致させる方法を学び、お互いの役割について理解を深めます。
両チームが同じテンプレートを使用し、同じ目標に向かってスタートしました。セッション中、Unity のトレーナーは各参加者と 1 対 1 で問題解決に取り組み、制作のすべての段階にわたって参加者を手助けしました。「アーティストはトレーニング前には Unity にさわったこともありませんでした。それでもハッカソンで同じチームのエンジニアと協力して、12 時間で実際に動作する独自のゲームを 2 本制作しました」と Gómez 氏は言います。ハッカソンから 2 か月後、チームは 3 回目のトレーニングに参加しました。そこでは新しいスキルを足がかりに、より上級者向けのトピックとテクニックに取り組みました。
全面的な改善
「トレーニング前、チームの最大の気がかりは、Unity を使う唯一のアーティストが会社を辞めたことでした。彼女の美的センスは惜しまれますが、今では全アーティストが Unity を効果的に使用できます」と Gómez 氏は言います。実際に、今ではアーティストを採用するときに美的センスとデザインに関わるスキルを重視できるようになりました。Unity 開発環境の使い方は同僚からすぐに学べることがわかっているからです。
Unity のトレーニングは、Playspace のほぼすべてのワークフローにおいて、制作の改善につながりました。アーティストは、半年かかっていたものを 1 か月で制作できます。チームは、開発スプリントの期間を正確に見積もることができます。以前は、見積もりが数週間ずれていたこともありましたが、今では常に的確です。開発スプリントを導入することにより、はるかに多くの作業をこなせます。さらに、エンジニアとアーティストのコミュニケーションが増え、同じプラットフォームで作業するようになったため、ますます多くのイテレーションを実行できます。Gómez 氏はこのように述べています。「Unity を使用してプロトタイプを作成し、それに対してイテレーションを実行して改善を加えるという、このサイクルが非常に高速です。すべてのゲームが継続的に改善されています。言うまでもなく、より短時間で市場に投入できます。」

Playspace のゲームの制作と運用を支援
グローバル市場での存在感を拡大することを目指す中で、Playspace は Unity の複数の製品とサービスを活用して制作を強化し、適切なユーザーを獲得して、その過程で収益を生み出しています。
マネタイゼーションの面について、Villar 氏は「広告に関して何をすればよいかは、Unity Ads を通して気付くことができました」と言っています。それは、Playspace がなぜ Unity トレーニングサービスをすぐに信頼するようになったのか、また、ただゲームを制作するためだけではない Unity の幅広い製品を活用することに成功の公算があると見ているのかを示す理由の 1 つにすぎません。
また、Playspace は deltaDNA とも 5 年以上にわたって連携してきました。deltaDNA は今では Unity の製品です。deltaDNA には、詳細なゲーム解析とエンゲージメント促進機能が組み合わされていて、開発者は緻密で豊富なデータに基づいて各プレイヤーの体験をパーソナライズできます。
さらに、Playspace は GameTune のベータテストに参加し、機械学習を活用してゲームの賭け金の乗数などを最適化しています。GameTune は学習、調整を継続的に繰り返して、最高のゲームプレイ体験を届けます。
違いをもたらしたプロフェッショナルトレーニング
Unity は何年にもわたって Playspace の制作に不可欠なものでしたが、プログラマー、デザイナー、アーティストが効果的にコラボレーションを行うには、特別な何かが必要でした。それがプロフェッショナルトレーニングでした。より多くのイテレーションを作成しながらもコミュニケーションの向上を図り、やり取りを容易にすることで、Playspace のチームは品質を改善し、制作サイクルの期間を短縮しました。Villar 氏はこのように言っています。「特にエンジニアの場合、自分ですべて解決したいと思う傾向があります。しかし、誰かからヒントをもらうようにすることで、時間とコストを大幅に削減できることがあります。Unity プロフェッショナルトレーニングは、Playspace が大きな飛躍を遂げるのを助けてくれました。」