Playkot - Unity のケーススタディ
ロシアのサンクトペテルブルクにある即席のキッチンテーブルで仕事をしているビジネスマンとソフトウェア開発者が、どのようにして業界で最高レベルのグラフィックスを使って洗練されたソーシャルゲームやモバイル RPG の制作に進むのでしょうか?Meet Sasha Pavlov と Oleg Sysoev は 2009 年に Playkot Games を始めました。その後、適切な人物を慎重に組み合わせ、Unity を採用し、世界中でかなりの市場シェアを獲得するための適切な戦略を実行することによって、150 人を超えるまでにチームを拡大しています。
一晩の改造が数百万人のプレイヤーにつながる
Playkot の 2 人の創業者は、「ロシア版 Facebook」VKontakte(VK)からゲームビジネスを開始しました。VK は 2007 年のサービス開始後すぐに人気を集め、アプリケーション用の支払いシステムを開設した 2009 年半ばまでに、利用者は 400 万人を超えていました。Sasha と Oleg はどちらも、ソーシャルネットワーキングのトレンドが急成長していて、逸してはならないオポチュニティだと気付いていました。どちらもゲーミングの経験はありませんでしたが、想像力に富んでいて、Oleg は Flash についてある程度の知識があったので、夜遅くまでかかって最初のゲームを構築しました。
モバイルへの移行に Unity が選ばれる理由
予想どおりに、その最初の努力はうまくいきませんでした。しかし、1 週間もしないうちに、バグを修正して、すぐに有料プレイヤーを引き付ける別のゲームを投稿しました。収入が続いていたので、リソースを追加して新たなゲームに取りかかりました。2010 年の秋までに、Playkot が『Club Life』をローンチしたときには VK の利用者はほぼ 1,000 万人に増加していて、『Club Life』はたった 1 か月で VK の利用者の 20% を上回る、230 万人のプレイヤーを引き付けていました。
『SuperCity』などのタイトルで成長を続け、収益では Facebook のゲームパブリッシャー上位 20 社に入るまでになった Playkot は、Unity を導入してモバイルプラットフォームへの移行を進めました(『SuperCity Mobile』は Unity を使って制作されました)。ソーシャルゲームとカジュアルゲームの開発も続けていましたが、高品質の RPG『Age of Magic』の方が、より大きな成功を収めるに至りました。
その成果は以下のとおりです。
- Unity ではより多くのリソースをその分野に割り当てることができ、トラブルシューティングも減ったので、アートとゲームデザインをますます重視
- 利用者ごとの平均収益(ARPU)が向上
- Unity 開発者人材のグローバルプールを利用
- 多様なモバイルプラットフォームに迅速に移植
- 高品質のゲームグラフィックスで名声を得る
一時的な成功だけではない
Playkot の進化は Flash ベースの開発者と似ています。1996 年に、FutureSplash Animator(Macromedia に買収されるまでは「Flash」)によって、デザイナーが基本的なタイムライン上にベクトルベースのアニメーションを配置できるようになりました。これは比較的覚えやすいツールであったため、ウェブ開発者はクロスプラットフォームビューアーを使って単純なアニメーションを埋め込むことができました。
2011 年に最初のアートディレクター Aleksey Guk が加わったときには、Flash は確かに Playkot の主要な開発ツールでした。その年に、『Pioneers』と『SuperCity』だけでなく、Flash を使っていない最初のモバイル端末用の作品である、iOS と Android 向けのさいころゲーム『Farkle Live』がローンチされました。
Guk によると、Playkot の成功の鍵の 1 つは庶民的なクリエイティブ環境にあるそうです。「同僚はまあまあのアイデアであれば、それに命を吹き込むことができます。アートディレクターやチーフのアイデアである必要はなく、チームの一員でさえあれば発言できます」。
iOS 端末の人気と Apple による Flash の排除は、Playkot やその他のゲーム開発者に大きな影響を与えました。HTML5、CSS、および JavaScript はますます重要なウェブテクノロジーになり、Unity の創業者たちはゲーミングエンジンの初期バージョンを Mac OS 上で開発していました。
Sasha と Oleg は VK と新しいソーシャルネットワークの重要性を認識していました。そのときに、2 人はモバイルゲーミングで新たに生まれた大きなオポチュニティに気付きました。
モバイルへの飛躍
2012 年にモバイルゲームはビデオゲーム市場の総額の 18% の規模になっていて、Newzoo の 2018 年の「Global Games Market Report」によれば、2021 年までにほぼ 59% になると予測されています。このシフトを正しく予測して、Playkot はモバイルプラットフォーム向けの開発の課題を楽しんでいました。Playkot は『SuperCity』などの Facebook ソーシャルゲームで、サーバーのスケーリングや数十万もの同時利用者への対処にかなりの経験を積んで開発してきましたが、モバイル市場には新たなスキルが必要です。
Roman によると、「モバイル環境での最も大きな課題は進み具合とコントロールにあり、それはデスクトップアプリケーションとは違ったマインドセットです」。幸運なことに、『Age of Magic』を構築するために、彼は「素晴らしいグラフィックスによる優れたゲーム」という目標を達成するために、芸術的側面と技術的側面の両方で適切な人材を見つけることができました。「私たちのチームには多くの「マジシャン」がいるので、不可能なことは何もありません。レンガの壁を見たら、「問題ありません。必要であれば乗り越えるか、通り抜けます!」と言うだけです」。
Unity への信頼
モバイルへの移行は新しい開発エンジンに移行することを意味します。モバイル市場は極度に競争が激しく、移り変わりも激しいので、Playkot はテスト用のプロトタイプを素早く生成できるだけでなく、多様なモバイル端末向けの運用環境のコードを素早く公開できるツールを必要としていました。開発チームは、このような抜本的な変更を行うリスクを認識していて、Sasha と Oleg はその不安を鎮める必要がありました。
自分は主に開発者ではなくビジネスマンであることをチームに思い出させてから、Oleg は 1 つ目の理由をチームに伝えました。「率直で明快な仕組みですが、私たちはライセンス料金を支払っているので、何百万ドルも稼ぎ始めたら、それはすべて私たちのものであり、彼らのものではありません」。Oleg は 2 つ目の理由として、Unity 開発者の相当な数のプール(世界中に 600 万人)では最適な人材を非常に簡単に見つけ出せることについて指摘しました。Roman は 3 つ目の理由としてこう言っています。「Unity には、私たちが制作したいと考えている種類のゲームを構築するのに必要なテクニカルツールがすべて含まれています。また、すぐ使えるリソースが数千点も揃っているアセットストアは、大いに利用価値があります。」
成功を収めているモバイルゲームの調査
Unity に移行するという重大な決断を下したことで、チームはモバイルゲームをダウンロードし始めて、UX の基準と特異性を注意深く調べました。ゲームのロードにかかる時間、中断することなく快適にプレイしていると感じる時間、タイムフレームの決定など、あらゆる時間を測定しました。「Unity はプレイヤーがゲームプレイのどこですっかり夢中になるか、どこでメカニクスのことを忘れるかを把握するのに役立ちます」と Roman は言います。
その後 Playkot は、グラフィックスを駆使するゲームでの Unity の豊富な経験を持つチームのチーフを採用しました。Roman は言います。「彼は首謀者なので、彼を中心にチームを作りました。誰もが彼と彼のコードから学び、Unity コースの受講を望むメンバーにはその料金を支払いました」。
トレーニングにはそれほど時間はかかりませんでした。「基本的なことを学習すると、メンバーは更新とバグの修正の作業を始めました。当社のすべての開発者には優れた全般的なスキルがあるので、素早く習得できました」。
ゲームデザインと ARPU が高いジャンルに集中
Roman によると、Unity の長所の 1 つは、開発者がテクニカルな面ではなくアートやゲームデザインに集中できることです。「ある企業が、利用可能なあらゆるシェーダーと、より最先端に見せるためのあらゆるものを使って、テクノロジーショーケースを構築しようとしました。当社ではありません。Playkot ではゲームデザインのアートが最優先されます。そのために Unity を選んだのです」。もうひとつの重要なメリットはスピードです。「アーティストの簡単な概要から製品開発まで、Unity を使うと、テストを完了し、すべてのアニメーションとビジュアルエフェクトを仕上げて、1 つのキャラクターを 4 週間以内に開発できます。これは、得られる品質レベルを考慮するとかなり高速です」。
2014 年に Flash で制作した『SuperCity』は Facebook の「Best New Game Award」を獲得し、2017 年 7 月にリリースした『SuperCity Mobile』は Playkot の最初の「Made with Unity」ゲームになりました。しかし、CEO である Sasha は現状ではなくトレンドを見ていました。Roman は言います。「カジュアルソーシャルゲームは多くのプレイヤーを獲得していますが、そのようなプレイヤーは 1 つのゲームに熱心に取り組んでいるとは限りません。戦略的な RPG ゲームのプレイヤーは少数ですが、そのようなプレイヤーははるかに熱心であり、ゲームプレイに多くの時間を費やす傾向があります。私たちは本当に洗練されたグラフィックスが気に入っているので、それを目立たせるゲームを構築することを望んでいて、そのような熱心かつ忠実なプレイヤーにリーチすることも望んでいます。そのために、多様化することを選んでいるのです」。
抜本的なシフトは、Playkot の ARPU(利用者ごとの平均収益)の向上にもつながりました。
『Age of Magic』の誕生
ゲームプロデューサーの Roman Zorin は、学生の頃からずっと「魔法によって引き裂かれた世界」に取り組んでいます。彼は Playkot では多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム(MMORPG)のプロトタイプとポータルを開発していて、「野心的で大規模なハードコアであり、Playkot では誰も気に入っていない」と言っています。彼は、ヒーロー、場所、戦闘、対立といった基本的なゲームの要素は最高だったと確信していました。「私は適切な組み合わせを見つける必要がありました」。社内での 3 回のハッカソンの後に、チームは適切な組み合わせを見つけて『Age of Magic』が誕生したのです。
Roman は言っています。「このプロジェクトの総合プランを準備するのに 3 人で 5 か月間かかりました。その後に開発者を 4 人増員し、その 2 か月後に、グラフィックスコンセプトを示すためのゲームのバーティカルスライスを制作しました」。チームが 12 人に増えて、制作を開始しました。ゲームのソフトローンチまでに 5 か月かかり、iOS でのハードローンチまでにもう 3 か月かかり、その 5 か月後に Android でのハードローンチを迎えました。
Playkot では『Age of Magic』の開発中に、Unity の統一された手続き型カメラシステムである Cinemachine を大々的に活用しました。「膨大な魔法の世界を見せ、プロットを統合し、キャラクター、対話、およびアニメーションを使ってカットシーンを生成するための時間が限定されていました。Cinemachine では本当にすべてのカメラワークが簡略化されたので、アート要素の微調整に取り組む時間を取ることができました。そのため、『Age of Magic』はモバイルで最も見栄えのいい RPG になっています」と Roman は断言していました。
多少の相違はありますが、今日の Playkot はほぼ 700 万人のプレイヤー(1 日あたり 100 万人)がいることを誇りにしています。中国では上位 50 に達していて、Playkot は中国のある有名なパブリッシャーに市場で成長し続けていることを伝えていました。もはや驚きには値しませんが、『Age of Magic』は Playkot で最も収益性の高いゲームとなっています。そして機動性と発想力に優れたこのロシアのスタジオは、会社の継続的成功に Unity が大きく貢献していることを認めています。
Cinemachine と『Age of Magic』
『Age of Magic』でまさに魔法の瞬間を数多く創り出すために、Playkot は Unity の手続き型カメラシステム Cinemachine を展開しました。数え切れないほど多くの視点と角度から、複数の仮想レンズを通してストーリーを描くことで、ハラハラ感に満ちた刺激的なゲームプレイへとプライヤーを引き込んでいます。
Unity のアセットストア
「Unity には、私たちが制作したいと考えている種類のゲームを構築するのに必要なテクニカルツールがすべて含まれています。また、すぐ使えるリソースが数千点も揃っているアセットストアは、大いに利用価値があります。」 – Roman Zorin、Playkot のゲームプロデューサー
制作中に使用されたアセットの例としては、Vertex Dirt(頂点アンビエントオクルージョン)があります。これは、アンビエントオクルージョンから頂点色への変換に役立ちました。