MADFINGER Games:Unity のケーススタディ
有名なゲームフランチャイズが大きな機能を新しく追加する際にその公開を円滑に進めるにはどうすればよいでしょうか?10 年前、Unity と MADFINGER Games はまだ双方とも小さな会社であり、モバイルゲーム分野に進出したばかりの頃にチームを組みました。時代は大きく変わりましたが、その関係性はかつてないほど強固になり、ゲームのライフサイクル全体にわたる重要な運営の部分にまで及びます。

MADFINGER Games team
影に隠れていないインディーゲーム
強硬な独立路線をとる Madfinger の 2010 年からの使命は「最高のモバイルゲームを制作すること」です。今でも 100 人を超えるチームメンバーがそれを実践しています。2019 年には、『Shadowgun Legends』が Google Play で Most Beautiful Game を受賞しました。8 タイトルのダウンロード数は合計で 2.6 億回にのぼり、『Shadowgun: DeadZone』、『Dead Trigger』、『UNKILLED』などのタイトルの Madfinger 独特のタッチが忠実なプレイヤーベースに愛されています。
直近でローンチした『Shadowgun War Games』は、コンソールレベルの高い質を誇るモバイルマルチプレイヤー一人称視点シューティング(FPS)で、SARA、JET、REVENANT、WILLOW、SLADE などのヒーローが登場し、対戦せずに一人でプレイしたり、5 対 5 で本気で戦ったりと、さまざまなレベルのプレイヤーが楽しめます。Madfinger は Unity のリアルタイム 3D コンテンツ制作プラットフォームを活用してゲームを構築、ローンチしました。ゲームホスティングには Multiplay を採用し、間もなくゲーム内音声コミュニケーションのために Vivox を導入する予定です。

成果
- Unity の幅広い開発者向けツールによりプロトタイプ作成、イテレーション、最適化を高速化
- 1 つのコードベースでマルチプラットフォーム(Android、iOS)向けのビルドが簡単に
- さまざまなゲームで採用された実績のある Multiplay の実証済みテクノロジーによりシームレスなゲームサーバーホスティングを実現
- 新しい Matchmaker(ベータ版)によりコンマ秒単位でプレイヤーとサーバーのマッチングが可能に
- Vivox のおかげで音声コミュニケーションを簡単に導入可能に
今すぐ視聴:MADFINGER Games との対談
この対談では、Madfingerの CEO であり共同創業者である Marek Rabas 氏が、彼のチームが直面している課題と、Unity の一連のマルチプレイヤーツールを活用してどのように解決するかについて話しています。

エンジンは気にせずにゲーム制作に集中
Madfinger は競争心を持った結び付きの強いスタジオであり、モバイル分野において強大な競合他社に対抗するために無駄のないサイズ感を重きを置いています。そして、その競争心に基づいて技術的な判断を下します。
「10 人がエンジンに、別の 10 人が他の内部ツールに取り組むようなやり方では立ち行きません。ゲームデザインと美しいビジュアルを制作することに全力を注ぐ必要があります。それが私たちの強みです」Madfinger の CTO である Miroslav Ondrus 氏はこう述べています。
「20 年以上前にゲームの制作を開始した頃は、それほど多くのサードパーティ製のエンジンはなかったため、自分たちで作成して保守する必要がありました。しかし、今では Unity のような 1,000 人以上ものエンジニアに支えられた完全なエンジンがあります。おかげでエンジンの構築やメンテナンスに時間をかけることなく、ゲーム開発に注力できます」
Madfinger の COO 兼 CMO 代理である Luciano Alibrandi 氏も同じ見解を持っています。「10 年前、Unity と Madfinger は双方とも成長途上にあるよいタイミングで出会いました。双方にとって双方が持っていたスキルの完璧な組み合わせであって、正しいタイミングで引き合わされて以来、長期にわたる関係性を築き、それぞれが最も得意としていた分野に注力できるようになり、結果すばらしいゲームの制作につながりました」

多くの開発チームを支援
さて、新しいタイトルにゴーサインが出た後、Madfinger はどのようにして最新のゲームのアイデアの具体化を開始するのでしょうか?
「私たちは ProBuilder を非常に気に入っています。ProBuilder は Unity 内で新しいレベルやアセットのプロトタイプを作成するための強力なツールです。シーンを短時間で制作してチーム間でイテレーションするのに使用します。また、すべてのレベルをグレーボックス化するのにも使用しています。すべてが Unity 内で完結し、別のサードパーティ製ソフトウェアツールを使用する必要がないため、便利です」
また、Ondrus 氏は Unity のアニメーションエディター、特に更新されたバージョンの Curves モードでのキー操作がお気に入りです。チームのアニメーターは Autodesk の MotionBuilder を使用して作品を制作しており、クリップをインポートした後は複数のキーを一度に操作して、たとえば、カーブを横方向(時間の配置を変更する)または縦方向(値を変更する)に拡大/縮小します。小さな機能ですが、ワークフローが大幅にスピードアップします。
もう 1 つのお気に入りの機能は、ベイクしたライティングモードです。Ondrus 氏は、これにより 2 つの重要な利点が得られると言います。「パフォーマンスを損なうことなくゲームをすばらしい雰囲気に仕上げます」
プレイヤーのデバイス上でどれほど高忠実度のグラフィックを実行できるかを常に意識しつつ、Ondrus 氏はこう述べています。「私たちはモバイルデバイスのバッテリーの持ちについては重々承知しており、必然的にパフォーマンスの改善に力を入れています。そのために、Profiler などの Unity のツールを活用しています。Profiler は不要な割り当てやレンダーコールを探し、コード全般を最適化するのに役立ちます」他にもフレームデバッガーやオクルージョンカリングを利用して、ビルドをしっかりとしたものにし、プレイしているデバイスを問わずゲームが正しく表示されるようにします。
Ondrus 氏は Unity のもう 1 つの人気の機能について言及しています。「私にとって、Unity のマルチプラットフォーム機能のおかげで物事を大幅に簡略化できました。1 つのコードベースでゲーム全体をビルドできるうえ、それが実行されるモバイルデバイスについて心配する必要がありません。Unity なら、非常に簡単です。設定を切り替えるだけで、対象とするプラットフォーム用のランタイムバージョンが出力されます。」

ラグ、チート、P2P にさよなら
スタジオにとって新しいゲームをホストする方法と場所は長年の懸案であり、100% ベアメタル型のサーバーからクラウドまで、あらゆる選択肢があります。それぞれの選択肢には技術面、財政面での強みと同様に、欠点も存在します。将来に目を向けて、Madfinger は早期の段階で『Shadowgun War Games』のような他のプレイヤーと争う一人称視点シューティング(FPS)にとって、ピアツーピア(P2P)は効果的ではないと判断しました。スムーズでラグのない体験を保証するために、専用サーバーが必要でした。
Madfinger のリードプログラマーである Vladimir Zadrazil(「Zadr」)氏にとって、選択は簡単でした。「『Shadowgun War Games』について私たちが抱いている野望は、楽しく対戦に熱中できる体験を届けることであったため、ラグ、チート、長い待ち時間は受け入れられません。Multiplay のマルチクラウドでスケーラブルなソリューションのおかげで、デバイスや場所を問わずに一貫した体験を提供できます。唯一、確実に勝てることだけはお約束できませんが」
新しいゲームを e スポーツの人気種目とする Madfinger の野望のためには、専用サーバーは必須でした。これにより、1 人のプレイヤーが対戦相手に対して不公平に有利になることがなくなります。「P2P では、1 つのデバイスがホストになるため、チートの発生リスクが高くなります。専用サーバーなら、チート防止策を講じて、必要に応じて簡単に閉鎖できます。これにより管理を強化できます」Zadr 氏はこう述べています。

スムーズなローンチ、シームレスなスケーリング
どのスタジオからも聞こえてきますが、新しいゲームのローンチには、だいたいどれだけのプレイヤーにどこから参加してもらえるかなど、常に不明な要素が伴います。しかし、『Shadowgun War Games』がライブになったときのサーバーのスケーリングはスムーズでした。「Multiplay のおかげで、サーバー容量がなくなるという問題は 1 回もありませんでした。噂が広まり、プレイヤーが大挙してダウンロードし、ゲームをプレイし始めても、簡単にスケーリングできました。プレイするために待つ必要があったプレイヤーは 1 人もいませんでした。これは私たちにとって本当に重要なことです」Ondrus 氏はこう述べています。
Zadr 氏によると、ゲームプレイ体験の良し悪しを決める最大の問題の 1 つが待ち時間です。「ネットワーキングについて Multiplay とコラボレーションしようと決めたのはこの理由からです。これは、Multiplay のサポートにより私たちはゲームの制作に注力できた一方で、Multiplay のテクノロジーについてフィードバックを提供し、Multiplay がそれを受けて私たちにとってだけでなく、全員にとってより良いものにするために製品に改善を加えるというウィンウィンの戦略でした」
また、Ondrus 氏は Unity のサポートが快適さに寄与したことを強調しています。「コミュニケーションは非常に迅速でスムーズです。たとえば、最近 Slack チャンネルで質問したところ、サンフランシスコの担当者が返信をくれてサポートしてくれました。これだけタイムゾーンが離れているのに驚きました。Unity との協力関係は非常に良好です。」

より優れたマッチメイキングでより優れたプレイヤーエンゲージメント
マルチプレイヤーでは、短時間で適切にマッチングされることがゲームプレイを楽しむうえで必要不可欠です。「プレイヤー体験は対戦相手を決めることから始まるため、そこには最高の体験がどうしても必要です。プレイヤーが待たさせることなくゲームに入れるようにし、プレイヤー同士で同じレベルで確実にプレイできる必要があります。そうしないと、プレイヤーはすぐにアプリを見限り、戻ってくることはありません」と、Zadr 氏は述べています。
『Shadowgun War Games』の開発中、Ondrus 氏はマッチメーカーを設計していたと言っています。「これは Unity が独自のスケーラブルなマッチメーカーサービスを制作していることを知る前のことで、私たちにはサードパーティのシステムを使用するという選択肢がありませんでした。しかし、見つけた途端にそれに飛びつきました。やらなければならないことは独自の関数をセットアップすることだけで、非常に簡単な作業でした」
プレイヤーがマッチに参加する前に、ゲームクライアント(プレイヤーの携帯電話など)で Multiplay のグローバルデータセンターへの接続品質がサービス品質(QoS)と共に計測されます。QoS データが、マッチ設定と Madfinger のサーバー認証ロビーサービスによってチートを防止するために収集されるプレイヤーの統計と共に、マッチメイキングに送信されます。マッチメーカーは Madfinger のカスタムマッチ関数を実行し、接続が高速なマッチを探します。そして、これらはすべて数秒以内に発生します。
Multiplay のマッチメイキングサービスは、マルチクラウドスケーラーに完全に統合されています。これにより、プレイヤーが正しいマッチに入れるようにするだけでなく、正しいサーバーに確実に配置されます。

Vivox で音声でのコミュニケーションを可能に
最近のマルチプレイヤーゲームでは、キャンペーン中やバトル中のライブコミュニケーションは成果を上げるうえで重要です。音声コミュニケーションはプレイヤー体験において最も重要な要素の 1 つで、プレイヤー同士が何をしたいか、どうやってすればよいかなどを話し合って整理できるため、操作性に大きく寄与します。
Madfinger は『Shadowgun Legends』に初めて Vivox を組み込みましたが、非常に簡単なプロセスでした。Unity の Vivox SDK の設定にかかった時間はわずか 2 日で、それは見込んでいた実装時間でした。「こちら側でちょっとした問題はいくつか発生しましたが、全般としては非常に簡単で面倒のないプロセスでした」Ondrus 氏はこう述べています。今や Vivox はゲーム用のあらゆる音声コミュニケーションをホストおよび管理しており、Madfinger は近いうちに『Shadowgun War Games』に組み込む予定です。
これはつまり、Madfinger チームは開発プロセスをスピードアップし、プレイヤーエンゲージメントに注力できることを意味します。「Vivox チームによるサポートを 24 時間無休で受けられるのは本当に助かります。1 リージョンでのダウンやバグの発生などに悩まさせることなく、Vivox の担当者に連絡すれば直してもらえます」Ondrus 氏はこう付け加えています。
ゲーム内コミュニケーション戦略の締めくくりとして、プレイヤーが絵文字なども使用してコミュニケーションを取ることができるほか、Madfinger は近くテキストメッセージングを導入する予定です。

Madfinger の次の一手は?
「私たちは『Shadowgun War Games』をローンチできたことを非常に嬉しく思っています。このゲームは 1 人でもチームでの対戦でも幅広く楽しんでもらえると考えています」Ondrus はこう述べています。「そしてプレイヤーベースが拡大するにつれて、e スポーツについて考え始めるのは間違いありません」と聞いても驚きではありません。何といっても、この野心的なスタジオはモバイルゲームの舞台において常に予想以上の成果を収めています。
Madfinger による Unite Copenhagen でのプレゼンテーションをご覧ください。ゲームのホスティング、マッチメイキング、音声コミュニケーションに Multiplay と Vivox をどのように活用しているかその舞台裏について説明します。