Guns of Boom: モバイル向け Unity のケーススタディ
『Guns of Boom』の PC 向けアルファ版のリリースを目指し、開発を開始してから 4 か月後、Game Insight はあるひらめきを得ました。カジュアルプレイヤー用にこの FPS プロジェクトのモバイル版を作れば、市場の隙間から利益を得られると考えたのです。さらに、モバイルにおける過去の体験や Unity からのサポートを活用してモバイルフレンドリーな体験を実現すれば、より幅広い市場にリーチできると確信していました。現在、1 日あたりのアクティブユーザー(DAU)が 100 万人に達していることから考えても、彼らの選択は正しかったと言えるでしょう。

『Guns of Boom』が 2 週間で 500 万ダウンロードを達成
『Guns of Boom』は 2017 年 5 月にローンチされ、2 週間で 500 万のダウンロードを記録しました。ただし、もしこの種のマルチプレイヤーモバイル FPS に対する市場がまだ成熟していなければ、最適なオーディエンスを見つけるために行った Game Insight の努力はすべて無駄になるところでした。この種のゲームとは、短いセッションでどこでも簡単にプレイできる高品質なゲームのことです。
その成果は以下のとおりです。
- ルックアンドフィールの最初のプロトタイプを約 1 か月で作成
- Unity のエンタープライズサポートによって開発時間を数日単位で削減
- 最初の 2 週間で 500 万のダウンロード
- 最初の 1 年で 5000 万人のプレイヤーを獲得
- 1 日あたりアクティブユーザー数(DAU)は 100 万人

ルックアンドフィールバージョンを約 1 か月で完成
Guns of Boom は、2015 年の時点ですでに、複数のレベルが用意された遊びごたえのある PC ゲームプロジェクトでした。しかし、市場調査やユーザー調査を行った結果、Game Insight はこのタイトルをモバイルゲームに変えることで、市場の隙間を開拓できる大きなチャンスが見込めることに気づきました。
場所や時間を選ばず短時間でプレイでき、操作も簡単なマルチプレイヤー FPS を作れば、必ず市場に受け入れられると確信したのです。
「私たちは使いやすいゲームデザインを実現するために、できることをすべて実行しました。自動照準などの機能を取り入れ、操作をシンプルにしたので、誰でも数秒で操作をマスターできます。しかも、プレイの場所を選びません。スーパーやバス停で列に並んでいるときでも、ベッドの中でも、寝転んでいても座っていても立っていても、いつでもどこでも遊べます。また、マップがそれほど大きくないので、ゲームを起動してから 5 分間という短時間で、ノンストップアクションを楽しめます」(Game Insight CEO、Anatoly Ropotovat 氏)。
モバイルへの移行が決まれば、どの技術を採用するかは考えるまでもありませんでした。このスタジオではこれまでにも Unity を使ったモバイルゲーム制作を豊富に経験しており、『Airport City』や『X-Mercs』はすでに 7 年間、大きな収益を上げ続けていました。そのため、Unity なら高品質なモバイルゲームを効率的に作るために必要なものがすべてそろうことを知っていたのです。
Unity によって開発時間を半年分短縮
「Unity のおかげで、わずか 1 週間のうちに、コンソールバージョンからモバイル版の最初のルックアンドフィールイテレーションを作成できました。その後、グラフィックやパフォーマンス、コントロールなどの最適化も含め、数か月で PC からモバイルへと完全に移行することができました」(Ropotov 氏)。
彼らは Unity アセットストアを活用してモバイル版への初期移行をスピードアップしただけでなく、それ以降もプロトタイプ作成のためにアセットストアを利用して、プレイヤーを飽きさせないための新しいコンテンツを追加してます。
「モデルやコントローラーなど、何か必要なものがある際には、アセットストアから入手したもので最初のルックアンドフィールを作成するようにすれば、開発時間を最大 6 か月も短縮できます」(Ropotov 氏)。

プラットフォーム固有の最新技術を実装
Game Insight にとってもう 1 つの課題は、Guns of Boom のアップデートと最新機能の提供を、いかにして継続していくかということでした。それはプレイヤーにできる限り最新かつ最高の経験を提供するうえで欠かせないことだからです。
新しいスマートフォンが発売されるたびに、プラットフォーム固有の機能(触覚フィードバック、ARCore、ARKit、3D Touch など)が次々と登場しますが、それらの最先端技術に対応し続けていくことは非常に大変なことです。そのため Game Insight では、4 人の専門技術アーティストを含む強力な調査研究部門を組織しています。
「Apple や Google が新機能を発表すると、私たちは直ちに、それをどうやって実装するかについての調査を開始します。Apple 版だけでも、Guns of Boom にはプラットフォーム固有の機能が 12 もあるのですが、私たちはそれらをすばやく実装しました。これは世界でもトップクラスの速さです。ただし、Unity のマルチプラットフォームサポートや緊密なパートナーシップがなければ、我々がどれほどすばやく対応したとしても目的は達成できません。Unity のおかげで、私たちは最新のモバイル技術に対応し続けることができているんです」(Ropotov 氏)。
プレイヤーにすばらしい体験を提供するには、最新の機能に対応し続けるだけではなく、最新の技術も実装していく必要があります。たとえば、Game Insight では、Apple が 2017 年 9 月 に ARKit を発表した直後に、Augmented Reality Spectator Mode をリリースしました。
e スポーツへの進出
AR Spectator Mode の成功を受けて、Game Insight では e スポーツの市場に大きな可能性を見出すようになりました。同社は約 2 年前から Electronic Sports League (ESL)と提携関係を結んでおり、最近では 50 万ドルの賞金付きトーナメントも主催しています。このトーナメントはポーランドのカトヴィツェにある 11,400 人収容の Spodek Arena で開幕され、2018 年 11 月にロサンゼルスで開かれた ESL シーズンファイナルでは、最高で 15,000 人の同時視聴者を記録しました。これにより Guns of Boom は、このような大きな規模で e スポーツに参入した、最初のモバイルシューティングゲームとなりました。
プレイスタイルがオンラインかオフラインかにかかわらず、またプレイの目的が単なる楽しみなのか多額の賞金なのかにかかわらず、はっきりと言えることが 1 つあります。それは、Guns of Boom が数百万にも及ぶ世界中の熱心なプレイヤーの心をつかんだだけでなく、今後もファンを魅了し、プレイヤーとともに成長していくであろうということです。そしてそれを支えているのは、最新技術によって革新を提供し続けようとする、Game Insight のリーダーシップと運営姿勢なのです。

エンタープライズサポート
Game Insight は、Unity のエンタープライズサポートを 3 年間にわたり利用しています。 開発者と Unity エンジニアが直通ラインで連絡が取れることのほか、制作期間の短縮に寄与するプロジェクトレビューには特に助けられていると言います。
「当社では、継続的に、かつ即座に更新を行うので、プロジェクトレビューが非常に重要です。 自社でレビューに対応することももちろん可能ですが、時間がかかってしまいます。 Unity エンジニアがオフィスを訪れて、プロジェクト全体を見直してくれます」と Ropotov 氏は言います。
「彼らには、メモリや fps などを最適化して、プレイヤーの体験とデバイスのパフォーマンスを向上させるにはどうすればいいか相談しています。 また、ビジュアル、シャドウ、クロスのシミュレーションやポストエフェクトをより美しく見せるにはどうすればいいかなど、快適なプレイのために役立ちそうなことなら何でも質問しています」