『Children of Morta』:2D ゲーム制作における Unity 活用のケーススタディ
『Children of Morta』のゲームプロジェクトチームは世界中に分散した 14 人のクリエイターで構成され、各自がさまざまな役割を担っています。すべてのクリエイターが 1 つのチームとして効率的に共同作業できるようにするため、Dead Mage では、Unity の柔軟なプラットフォームと多様なツールをフルに活用する必要がありました。
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ゲーム
Children of Morta
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目標
ストーリー、アート、ゲームプレイを 1 つのシームレスな体験に統合
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プラットフォーム
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チームメンバー
14 人
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所在地
テキサス州オースティン
Jakobsen Locke (formerly known as Jacobsen Beck), narrative designer at Dead Mage, describes how custom tools in Unity helped the team work more efficiently.
Dead Mage が Unity の柔軟性を最大限に活用
引き込まれるストーリー、美しいアート、魅力的なゲームプレイが一体となって、爽快なハックアンドスラッシュ型 2D ゲームを構成しています。
その成果は以下のとおりです。
- カスタムツールでナレーションプロセスの効率性が 20% 以上向上
- 新しいステージのプロトタイプを 5 日以内に作成
- ロード時間を数分から数秒まで短縮
- Unite Austin 2017 の「Made with Unity Showcase」で紹介される
- 2015 SXSW People の Voice Award 部門と GamePedia PAX West Picks にノミネートされる
鍵を握っていたカットシーン
Dead Mage の 2D ローグライクダンジョン探索型ゲームに使われる、美しい 2D アートとアドベンチャー部分の物語に、ペルシャ民話の影響が見られることは驚くべきことではありません。なぜなら、Dead Mage の創業者兼スタジオリーダーの Amir H. Fassihi 氏は、イラン出身だからです。
しかし魅惑的な神話というテーマをハックアンドスラッシュ型のゲームと統合するのは簡単なことではありませんでした。
「キャラクターと物語を重視したかったのですが、伝統的な一本道の物語をゲームに落とし込むのは無理でした。それではゲーム全体で物語が意味をなさなくなるからです」とチームでナラティブデザイナーをしている Jakobsen Locke 氏は言います。
Dead Mage の解決策は、ストーリーを展開させるカットシーンをいくつか作成して、それをゲーム内の重要なポイントでプレイヤーに見せるというものでした。
「誰かに自分が見た話としてプレイヤーにストーリーを語らせることで、プレイヤーに必要な情報が手短に伝わり、感情を揺さぶられたプレイヤーがすぐにゲームプレイに戻れるようにしたのです」と Locke 氏は語ります。
『Children of Morta』のカットシーンの一部を以下でご覧いただけます。
ストーリーライティングに伴う課題
物語とゲームプレイを連携させる方法を考えるのも大変ですが、また別の話として、開発者とナラティブデザイナーが物理的に離れた場所にいる場合は、その方法を簡単に実現できるとも限りません。Locke 氏はどのようにして必要な情報を開発者から入手し、テキストを書き、物語をゲームプレイと統合したのでしょうか?
「最初の頃は開発者がシネマティクスのビデオをいくつかオースティンに送ってくれて、それを使って物語を書いていたのですが、それでは時間がかかりすぎることがわかりました。誰かが少なくとも半日かけてビデオを録画しなければならず、それが私のところに届いて私から何らかの反応を返すまでには、時差もあるので 3 日はかかります。まったくもって時間の無駄遣いでした」と Locke 氏は言います。
3 日間のプロセスを Unity で半日に圧縮
開発者とナラティブデザイナーがもっと効率的に連携できるように、Dead Mage は Unity エディターを拡張しました。
「私が Unity に移動してすべてのアニメーションをざっくり確認できるように、開発者がカスタムツールをいくつか作ってくれました。それからは、必要なダイアログやテキストを直接 Unity で書けるようになりました。Unity エディターの拡張性のおかげで、3 日ほどかかっていたプロセスを半日に圧縮してプロセス全体を合理化することができました」と Locke 氏は述べています。
カスタムアニメーション/ナラティブデザインツールを下の動画で紹介しています。
内部ツールで Unity をカスタマイズしたことに加えて、作業の円滑化に貢献したものとして Locke 氏が挙げるのが、Excel との密接な統合です。彼は、すべてのテキストが正しく整形され、画面に収まっていることを確認するために Excel の機能を使っていました。
「式をインポートするだけで、すべての字幕がゲーム内の意図したところに自動的にインポートされるので、本当にありがたかったです」と Locke 氏は言います。
ゲームプレイを新鮮に、ロード時間を高速に
『Children of Morta』を支える屋台骨の 1 つが、引き込まれるストーリーです。しかし、ゲームプレイ体験はローグライクアドベンチャーを中心に組み立てられています。プレイヤーは多くの時間を洞窟や、砂漠、風の寺院で過ごします。
「ローグライクな要素があるので、プレイヤーはたくさんのゲーム要素を再プレイすることになります。そこで、毎回新鮮な感覚でプレイしてもらえる仕掛けが必要でした。その仕掛けとして私たちが考えたのが、連続的に生成されたシーンを通じてチャプターごとにプレイヤーが新しいセットや新しいパワーアップなどを見つけられるようにランダム化することでした」と Locke 氏は言います。
しかしシーンの連続的な生成には、ロード時間がかかるという重荷が伴います。すべてのアセットをあらかじめロードしておくことはできませんでした。レベルの生成に最大 5 分かかる可能性があったからです。
ロード時間を数分から数秒まで短縮
Dead Mage はカスタムアセット管理システムで Unity を拡張することでロード時間の問題を解決しました。カスタムアセット管理システムは、アセットではなく、アタッチされているアートや大容量ファイルを一切含まないアセットデータを呼び出します。その後ライトデータだけを使用して必要なアートを呼び出せるようになっています。
「カスタムアセット管理ツールには本当にスムースに移行できただけでなく、おかげで 4、5 分かかっていたロード時間が 10 秒から 15 秒に短縮されました」と Locke 氏は言います。
Dead Mage のカスタムアセット管理ツールを下で紹介しています。
プレイヤーをプロセスの一部にするラピッドプロトタイピング
『Children of Morta』のゲームプレイは、プレイヤーによる影響を大きく受けています。Dead Mage チームの主要メンバー数名のために開始された小規模なプロジェクトは、ほどなくして Kickstarter キャンペーンへと発展し、その結果、資金提供者をテストグループとして活用できるまでになりました。
Unity Engine を使用することで、同チームは主要なコンセプトとアイデアを豊富に盛り込んだ、完全なプレイアブルビルドを 2 週間で完成させました。この基盤ビルドの完成後も、プロジェクトチームは毎週新しいアイデアを加えながら新しいビルドを作り続け、新たなプレイテスターを集めながら仕上がりをチェックしていきました。
「プロトタイプの段階から Unity で作業できるのは、本当に素晴らしいことでした。1 週間程度で新しいキャラクターと簡単なアニメーションを追加し、メカニクスを組み込んでキャラクターの動作確認を可能にすることができました。ゲーム内で実際の操作感をチェックできるようにしたんです。しかもその作業は、最大でも 5 営業日しかかかりませんでした」と Locke 氏は言います。
プレイヤーをプロセスの一部にするラピッドプロトタイピング
『Children of Morta』のゲームプレイは、プレイヤーによる影響を大きく受けています。Dead Mage チームの主要メンバー数名のために開始された小規模なプロジェクトは、ほどなくして Kickstarter キャンペーンへと発展し、その結果、資金提供者をテストグループとして活用できるまでになりました。
Unity Engine を使用することで、同チームは主要なコンセプトとアイデアを豊富に盛り込んだ、完全なプレイアブルビルドを 2 週間で完成させました。この基盤ビルドの完成後も、プロジェクトチームは毎週新しいアイデアを加えながら新しいビルドを作り続け、新たなプレイテスターを集めながら仕上がりをチェックしていきました。
「プロトタイプの段階から Unity で作業できるのは、本当に素晴らしいことでした。1 週間程度で新しいキャラクターと簡単なアニメーションを追加し、メカニクスを組み込んでキャラクターの動作確認を可能にすることができました。ゲーム内で実際の操作感をチェックできるようにしたんです。しかもその作業は、最大でも 5 営業日しかかかりませんでした」(Locke 氏)。
デザインに関する意思決定に影響を与える Unity Analytics
テスターからのフィードバックに加えて、Dead Mage では Unity Analytics を有効にし、ゲームを制作しながらプレイヤーの行動を確認できるようにしました。客観的なデータによってプレイヤーの好みを把握し、どのキャラクターが最も人気があるかや、どの能力が最も使用されているかなどを確認できるようにしたのです。
たとえば、すべてのキャラクターに攻撃回避能力を与えてみたところ、結果としてプレイヤーの能力の使い方に影響が出ていることが、Unity Analytics のデータによってわかりました。具体的には、父親のキャラクターに攻撃回避能力が与えられた結果、そのキャラの持つ巨大なシールドが使われなくなりました。攻撃を回避する方が簡単だったからです。
「Unity Analytics からのデータを受けて、私たちはシールドを持っているときにだけ有効となる、新しい能力を追加しました。Unity Analytics のおかげで、データの蓄積がなければ行えないデザイン上の意思決定を下せるようになったのです」(Locke 氏)。